事務局長談話

 
2018年07月30日
労働政策基本部会報告書についての談話
日本労働組合総連合会
事務局長  相原 康伸

  1. 報告書は、中長期的な労働政策の課題を一定程度整理
     本日、労働政策審議会労働政策基本部会(部会長:守島基博 学習院大学経済学部教授)は、報告書を一部座長預かりの上で取りまとめることとした。労働政策基本部会は、労政審の他の分科会・部会と異なり委員全員を公益委員とし、先を見据えた働き方の課題やこれまでの労使の枠組みを超えた課題の審議を目的に新設された部会である。報告書は、AI等の進展、少子高齢化、就業形態の多様化等の環境変化に直面する我が国の現実を踏まえ、中長期的な労働政策上の課題を一定程度整理した。

  2. 国の責任において職業訓練・人材育成の政策展開を
     報告書は、[1]技術革新の動向と雇用・労働への影響、[2]働く人すべての活躍を通じた生産性向上等に向けた取組、[3]時間・空間・企業に縛られない働き方の3点について現状分析を行った上で、各々の政策課題を示した。
     [1]および[2]については、人は「機械では代替困難な人間に優位性があるスキルを身につけ、ディーセント・ワークに特化」すべきとした上で、職業訓練や人材育成の必要性等を示唆した。これらはAI等の進展や職業人生の長期化が予見される我が国の未来を考える上で重要である。今後は国の責任で適切に一般財源を確保し、具体的な政策展開をはかるべきである。

  3. 厚労省として雇用類似の者の保護の検討を進めるべきとした点は重要
     [3]については、テレワーク、副業・兼業に加えて、雇用類似の働き方の保護の必要性に言及した。具体的には、「従来の労働基準法上の労働者だけでなく、より幅広く多様な働く人を対象とし、必要な施策を考えることが求められている」とした上で、法律や経済学等の専門家による検討の早期着手を提起した。現状、「労働者」に該当しない就労者は、労働法の保護を受けられず、発注者による一方的な契約打ち切りや低収入、仕事が原因で負傷をした場合は無保障であるなどの実態もある。これら実態を直視し、厚労省がすべての働く者に労働政策の裾野を広げ、保護に向けた検討の歩を進めるべきとした点は重要である。

  4. すべての働く者が安心して働く社会基盤の構築が必要
     今後、報告書は、労政審本審の議決を経た後、各分科会・部会等において各論点の検討が進められることが見込まれる。雇用労働はもちろん、請負やフリーランス等、いかなる就労形態であろうと、「働くこと」に関する政策は、公労使の「三者構成原則」に立ち戻って議論・決定することが不可欠である。連合は、公労使による社会対話の重要性を改めて確認するとともに、すべての働く者が安心して働くことができる社会基盤の構築に向け、取り組みを進めていく。
     
    以 上