事務局長談話

 
2018年06月15日
政府の「経済財政運営と改革の基本方針2018」に対する談話
日本労働組合総連合会
事務局長 相原 康伸

  1. 働く者・生活者に寄り添った政策の実現と早期の財政健全化に向けた取組が必要
     6月15日、政府は、「経済財政運営と改革の基本方針2018」(骨太の方針)を閣議決定した。この中に、新たな外国人材の受入れなど、働く者・生活者に甚大な影響をもたらす政策が、慎重な検証・審議もなされず安易に盛り込まれたことは極めて遺憾である。また、新たに示された「経済・財政再生計画」では、国と地方を合わせたPB黒字化目標が2025年度に先送りされた。早期の財政健全化に取り組むべきであり、将来世代への負担をこれ以上先送りすることは許されない。

  2. 待機児童の解消を着実に進めるべき。新たな外国人材の受入れは問題
     方針では、力強い経済成長の実現に向けた7つの重点的な取組の1つとして、「人づくり革命の実現と拡大」を掲げている。この中で、幼児教育無償化の加速が示されているが、待機児童問題を解消しないままに進めることは、保育の質の低下、高所得者ほど恩恵を受けるといった問題を引き起こしかねない。最優先すべき課題は、待機児童解消と幼児教育・保育に携わる人材の定着・確保に向けた抜本的な処遇改善である。また、高等教育については、貸与型奨学金の完全無利子化や返還困難者への支援の拡充など、中間層を含めた抜本的な対策を強化し、早期に子どもたちの学びを社会全体で支える体制を構築する必要がある。
     人手不足の解消として、即戦力外国人材を広く受入れるための新たな在留資格を創設するとしているが、国民生活に直結するテーマであるにもかかわらず、検討過程が極めて不透明である。加えて、受入れの必要性や技能水準などの判断が業所管庁主導であることや外国人材を専ら「労働力」としてみなし、「生活者」として受入れる視点を欠いた制度設計は問題である。また、技能実習「介護」について、在留に必要な日本語能力基準を引下げることは、介護利用者の安全確保の観点から認められない。

  3. 財政健全化に向けて税財政一体での抜本的な対応が必要
     「経済・財政再生計画」において、社会保障の総合的かつ重点的に取り組むべき政策の取りまとめが2020年度からとされているが、人口減少・少子高齢化が進む中で、更なる社会保障改革を先送りすることは問題である。政府は、国民のくらしに直結する歳出項目には予算配分を重点化するとともに、税財政一体での税収基盤の強化を抜本的に行うなど、具体的な道筋を定めていくべきである。特に、雇用の質の向上、格差是正、貧困の解消のための施策は、社会の支え手を増やすことにもつながる。
     さらに方針では、経済・財政一体改革の推進に向け、主要な歳出改革項目として社会保障分野などを挙げているが、介護の軽度者への生活援助サービスの給付見直しなどは慎重な検討を行うべきである。また、薬剤自己負担の引上げや外来受診時などの定額負担の導入は行うべきでない。

  4. 引き続き「働くことを軸とする安心社会」の実現に全力で取り組む
     連合は、「2019年度 連合の重点政策」を取りまとめ、政府・政党への要請行動を進めている。引き続き、政府に対して、働く者・生活者視点での政策への転換を求めるとともに、「働くことを軸とする安心社会」の実現に全力で取り組む。
    以 上