事務局長談話

 
2018年06月04日
労働契約法20条に関する最高裁判決についての談話
日本労働組合総連合会
事務局長 相原 康伸

  1. 労働契約法20条に関する初めての最高裁判決
     去る6月1日、最高裁判所第2小法廷(山本庸幸裁判長)は、有期契約労働者が、無期契約労働者との待遇の相違は、期間の定めによる不合理な待遇差を禁じた労働契約法20条違反であるとして是正を求めた2つの事件(ハマキョウレックス事件、長澤運輸事件)の判決を下した。「労働条件の相違は、労働者の職務の内容、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない」とした労働契約法20条についての初めての最高裁判決であり、不合理性の判断の枠組みを示したことは意義があるものとして受け止める。
     

  2. 待遇差の不合理性判断は、個別の賃金項目ごとに判断
     運送の仕事に従事する契約社員が正社員との待遇の差の不合理性を争っていたハマキョウレックス事件では、待遇差の不合理性の判断の枠組みが示された。判決は、不合理性の判断にあたって、考慮要素を「職務の内容」「職務の内容及び配置の変更の範囲」「その他の事情」の順に判断した。また、不合理か否かを、賃金総額か個別の賃金・手当項目それぞれで判断するのかという点では、判決は賃金項目ごとにその趣旨に照らして判断した。他方、労働契約法20条違反の効果は、不法行為による損害賠償に留まり、不利益取扱いがなければ処遇されていたと考え得る待遇にする「補充効」は認められなかった。
     

  3. 定年後再雇用の事案では、「その他の事情」を考慮
     定年退職後の再雇用において、定年前と同様の仕事を行う嘱託社員が正社員との待遇差の不合理性を争っていた長澤運輸事件の判決においては、定年後再雇用の事案であっても労働契約法20条の適用を肯定した。その上で、不合理性判断にあたり、職務の内容及び変更範囲は同一としたが、「その他の事情」として、老齢厚生年金の支給や退職金等を考慮して、一部の手当についてのみ不合理性を認めるに留まった。なお、本判決は、定年後再雇用の場合に賃金を引き下げることを広く認めたものではなく、判決の射程と内容の正確な理解が必要である。
     

  4. 非正規雇用で働く者の労働条件改善に向け、職場の取り組みを一層力強いものに
     連合は、これまでも同じ職場で働くパートや契約社員などの労働条件の改善に取り組んできたが、2018春季生活闘争においては、同一労働同一賃金の法整備に先行し、非正規雇用で働く者の待遇改善の方針を掲げ、成果を勝ち取ってきている。連合は、今回の最高裁判決を受けた動向を注視するとともに、構成組織・地方連合会と一体となって、非正規雇用で働く者の組合加入と労働条件改善に向けて、職場の取り組みを一層、力強いものにしていく。
    以 上