事務局長談話

 
2018年03月27日
厚生労働省「職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会」報告書に対する談話
日本労働組合総連合会
事務局長  相原 康伸

  1. 「事業主に対する措置義務」が優先事項とされなかった点は残念
     本日、厚生労働省「職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会」(座長:佐藤博樹 中央大学大学院教授)は、「職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会報告書」(以下、「報告書」)を取りまとめることとした。本検討会は、「働き方改革実行計画」において、「職場のパワーハラスメント防止を強化するため、政府は労使関係者を交えた場で対策の検討を行う」とされたことを踏まえ、2017年5月に設置された。報告書において、「事業主に対する措置義務」が優先的に取り組むべき事項として明記されなかった点は残念である。
     

  2. 具体的な防止対策案が示されるも結論は先送り
     報告書では、職場のパワーハラスメント防止対策として、①行為者の刑事責任・民事責任(刑事罰・不法行為)、②事業主に対する損害賠償請求の根拠の規定(民事効)、③事業主に対する措置義務、④事業主による一定の対応措置をガイドラインで明示、⑤社会機運の醸成の5項目が挙げられている。これまでの検討会において、連合は、すべてのハラスメントに対応できる基本法の制定を求めつつ、まずは③を中心に進めるべきと主張してきた。他の委員からも③を中心に進めることが望ましいという意見が多く見られたものの、結論とはならなかった。

  3. 実効性の高い防止強化策の策定が今こそ必要
     政府は、これまでにも様々な取り組みを行ってきているが、職場のパワーハラスメントは増加の一途をたどっている。実効性の高い防止強化策を早急に講じなければ、被害の増加に歯止めがかからないことを強く認識すべきである。男女雇用機会均等法におけるセクシュアルハラスメントの防止措置義務を参考に、新たに事業主に対して職場のパワーハラスメントの防止措置を講じることを義務づけた上で、事業主が講ずべき措置に関する指針の策定などが今こそ必要である。
     

  4. 引き続きハラスメント対策の取り組みを強化
     職場におけるハラスメントの形態は多様化しており、顧客や取引先などからの著しい迷惑行為も含めた、いじめ・嫌がらせ全般の防止に向けた措置を講じることが必要である。また、ハラスメントの撲滅に向けては、誰もがハラスメントの行為者になり得るため、自身の行為について今一度振り返り、必要があれば是正するという社会認識を醸成していくことも不可欠である。今後は、労働政策審議会において、具体的な対応策について議論がなされることとなるが、連合は引き続き、誰もが安心して働くことができる職場環境が構築され、ディーセントワークを実現することをめざし、ハラスメント対策の強化に取り組んでいく。
    以 上