事務局長談話

 
2018年03月26日
厚生労働省「雇用類似の働き方に関する検討会」報告書に対する談話
日本労働組合総連合会
事務局長  相原 康伸

 

  1. 雇用類似の働き方に関する法的保護に向け、検討を急ぐべき
     本日、厚生労働省「雇用類似の働き方に関する検討会」(座長:鎌田耕一 東洋大学法学部教授)は、自営型テレワークやフリーランス、クラウドワーキングといった、いわゆる雇用類似の働き方に関する報告書を取りまとめることとした。本検討会は、「働き方改革実行計画」を受け、雇用類似の働き方の実態把握などを目的に、2017年10月に設置された有識者検討会である。報告書は、実態分析と課題整理が中心で政策の方向性を打ち出すには至っていないが、労働関係法規の保護を受けることができない就労者の法的保護に向け、検討を急ぐべきである。 

  2. 課題の整理に留まる報告書
     検討会報告書は、発注者による一方的な契約打ち切り、不安定で低い収入、仕事を失った際の保障がないことなど、雇用類似の働き方が直面する実態を踏まえた上で、法的保護の項目と課題を整理している。具体的には、保護の項目として、[1]契約内容の決定・変更・終了ルールの明確化、[2]報酬額の適正化、[3]仕事が打ち切られた場合や怪我で仕事ができない場合の所得補填などが記されている。ただし、これら項目は、そもそもの保護の必要性や、労働者概念の拡大などの保護の方法論も含めて検討課題として整理されている。
     

  3. 就労者保護に欠けると言わざるを得ない現行法制
     雇用類似の働き方であっても、実態として労働者性が認められる者には労働関係法令の適用を徹底することは当然である。他方、現行法下では、ひとたび労働者性が認められない場合は何ら労働関係法令の保護を享受できない。また、労働関係法令上の使用者責任や社会・労働保険の適用逃れなどの問題も生じかねず、就労者保護に欠けると言わざるを得ない。
     こうした労働者性の有無による二分論に関しては、いまだ具体的な政策立案には至っていない。雇用類似の働き方に関しては、事業者間取引として経済法のルールに委ねられがちであるが、働く者の環境整備を担う厚生労働省において、今こそ就労者の法的保護の検討を前に進めるべきである。
     

  4. 雇用類似の働き方に関する法的保護は世界の潮流
     シェアリングエコノミーなどの動きが活発な諸外国では、既に就労者保護に向けた検討や労働者性に関する裁判例などが見受けられている。雇用類似の働き方に関する法的保護は、世界的に見ても労働政策における最重要課題のひとつであり、ましてや雇用労働からの不当な置き換えなどはあってはならない。連合は、雇用関係はもとより、請負や委任などの形態で働く者を含むすべての働く者が安心して働くことができる社会基盤の構築に向け、取り組みを進めていく。
    以上