事務局長談話

 
2017年06月09日
政府の「経済財政運営と改革の基本方針2017」に対する談話

日本労働組合総連合会

事務局長 逢見 直人


  1. 6月9日、政府は、「経済財政運営と改革の基本方針2017(骨太の方針)」を閣議決定した。非正規雇用者の待遇改善、長時間労働の是正といった、連合が求めてきた政策と重なる点にも言及しているが、幼児教育・保育の早期無償化や待機児童の解消などの実現に向けた道筋は財源を含めて具体性に欠けている。

  2. 「方針」では、成長と分配の好循環の拡大と中長期の発展に向けた重点課題として、「働き方改革と人材投資を通じた生涯現役社会の実現」を掲げている。「働き方改革」については、「労働生産性の向上」のためではなく、一人ひとりが働きがいを感じながら、セーフティネットが張られた中で、健やかに働き続けられる社会をつくることを目的に取り組むべきである。
     人材投資・教育においては、新たに導入された給付型奨学金を含めて制度が拡充されるよう、さらに踏み込んだ抜本改革が必要である。また、幼児教育・保育の早期無償化や待機児童解消に向けては、子ども・子育てを社会全体で支える仕組みの構築をめざすべきであり、その財源については国民の理解を得つつ、教育と社会保障の制度的な性格の違いを踏まえて慎重に議論すべきである。
     子ども・子育て支援においては、これ以上先送りすることなく1兆円超の財源を確保すべきである。また、介護・保育の人材確保は依然として喫緊の課題であり、さらなる処遇改善に直接つながる財源の確保が不可欠である。
     女性活躍推進においては、性別役割分担意識をはじめとする性差別の払拭に積極的に取り組むべきである。

  3. さらに「方針」では、「経済・財政一体改革の進捗・推進」に向け、主要な歳出改革の取り組みとして社会保障分野などを挙げ、「改革工程表に沿って着実に改革を実行していく」との考え方があらためて示された。しかし、その中に盛り込まれている具体的な取り組みのうち、訪問介護の人員基準の緩和や介護給付の適正化については、必要な介護サービスの抑制につながることのないよう、介護離職を防止する観点からも慎重に検討すべきである。

  4. 当面の経済財政運営の考え方では、国と地方を合わせた基礎的財政収支を2020年度に黒字化する目標は維持されたが、新たに、債務残高対GDP比の安定的な引下げをめざすという指標が追加され、財政規律が緩むことも懸念される。補正予算編成も含めた年度予算全体での財政規律を厳格化すべきである。   
     また、中長期的な財政再建・健全化をめざすうえでは、税収基盤の強化を進めるとともに、一律的な歳出削減を行うのではなく、働く者・生活者が将来に展望を持てる社会づくりにつながる予算配分を実施していくことが不可欠である。

  5. 連合は、「2018年度 連合の重点政策」を取りまとめ、政府・政党への要請行動を進めている。引き続き、政府・政党に対して、すべての国民が将来に希望と安心を持てるよう、働く者・生活者視点での政策への転換を求めていくとともに、「働くことを軸とする安心社会」の実現に全力で取り組む。

    以 上