事務局長談話

 
2016年12月22日
給付型奨学金に関する閣議決定に対する談話
日本労働組合総連合会
事務局長 逢見 直人

  1. 本日、政府は、国の制度としては初めてとなる給付型奨学金の創設について閣議決定した。主な内容は、経済的に困難な状況にある子どもの進学を後押しするために、月額2~4万円の給付に加え、社会的養護を必要とする学生に対して入学金相当の給付を行うものである。2017年度から、特に経済的負担が重い学生の中から約2,650人に限定して先行実施し、2018年度には、住民税非課税世帯を対象に全国約5,000校の高等学校が1校につき1人以上の割合で推薦することで、1学年約2万人に拡大するとしている。制度の創設自体は前進であるものの、2万人という規模は、大学や専門学校に進学する学生の約40人に1人に過ぎず、約6人に1人とされる子どもの貧困の実態から見ても極めて不十分である。

  2. 公表された推薦の条件は、住民税非課税世帯のうち、(1)成績基準を満たした生徒、(2)部活動などで成果を出した生徒となっている。条件となる基準については、2017年1月以降に文部科学省が指針を策定することになっている。しかし、国民の関心が高い制度にもかかわらず、制度設計について議論してきた文部科学省「給付型奨学金制度検討チーム」は、議事内容や資料を非公開とし、制度利用者の意見を反映しないまま結論を出した。こうした検討方法は問題であり、対象者の規模についても得るべき政策効果にもとづくものになり得ていない。

  3. 閣議決定を受けて、来年の通常国会には、独立行政法人日本学生支援機構法の改正案が提出される見通しであるが、2021年度以降は追加支出が必要となる約220億円の財源確保も課題である。経済的に困難な状況にあるすべての学生が、安心して学び、働く力を備えることで貧困の連鎖を断ち切るためには、給付型奨学金の対象者の拡充はもとより、大学などの学費の引き下げ、貸与型奨学金の完全無利子化、返還困難者への救済措置の充実など、さらなる制度改善が必要である。

  4. これまで連合は、すべての子どもの学ぶ権利を保障するとともに、子どもの貧困解消の観点から、就学前教育の無償化や高等学校授業料の完全無償化、高等教育における給付型奨学金制度の創設などを求めてきた。連合が展開する「クラシノソコアゲ応援団! RENGOキャンペーン」においても、奨学金制度拡充に向けた街宣活動を全国各地で展開するとともに、労働福祉団体と連携し、広く社会に訴えかける取り組みも進めてきている。こうした取り組みが国民的関心につながり、政府・政党を動かしたことで給付型奨学金の創設が現実のものとなりつつある。連合は、引き続き、構成組織・地方連合会および関係団体と一体となって、よりよい奨学金制度の実現に向けて全力で取り組みを進めていく。
     
    以 上