2016年12月08日
「雇用保険部会報告」に対する談話
- 12月8日、労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会(部会長:岩村正彦・東京大学大学院教授)は、「雇用保険部会報告」を取りまとめた。基本手当について、特定受給資格者(倒産、解雇などによる離職者)の所定給付日数を一部拡充するなど、雇用のセーフティネットを拡大する内容が盛り込まれたことは概ね評価できる。しかし、連合が繰り返し主張してきた自己都合離職者などの給付水準を2000年および2003年改正前の水準に戻すことについて、結論を得ず先送りされたことは遺憾である。
- 「報告」の主な内容は、(1) 特定受給資格者のうち被保険者期間が1年以上5年未満である者の所定給付日数を、30歳以上35歳未満で30日(拡充後120日)、35歳以上45歳未満で60日(拡充後150日)拡充すること、(2)最低賃金を踏まえ、賃金日額の下限額、上限額などの引き上げ、(3)雇止め離職者を5年間の暫定措置として特定受給資格者とすること、(4)雇用情勢悪化や震災などに対応する個別延長給付の創設、(5)教育訓練給付の拡充、(6)育児・介護休業法の改正にあわせた給付の見直し、(7)失業等給付にかかる保険料率を3年間に限り2/1000引き下げ、(8)失業等給付および求職者支援制度にかかる国庫負担を3年間に限り本来負担すべき水準の10%への引き下げなどである。
- 雇用保険制度は、失業時の生活の安定こそが最も基本的な目的であり、6兆4,000億円を超える積立金は、労使が拠出した保険料であることを忘れてはならない。今回の見直しにおいて、給付改善が特定受給資格者の一部に限られ、雇止め離職者への対応が暫定措置(5年間)とされた一方、教育訓練給付の拡充が恒久措置とされた点は、雇用保険の本体給付と訓練給付とのバランスを失している。また、国庫負担が政府の雇用対策への責任を示すものであることに鑑みれば、その大幅な引き下げは、3年間の時限的措置であることを確約するものでなければ到底認められない。
- 今後、「報告」にもとづき、労働政策審議会職業安定分科会において雇用保険法改正に関する法律案要綱の審議を経て、次期通常国会への法案提出が見込まれる。連合は、懸念点の解消に加え、国庫負担のさらなる引き下げが厳に3年間に限定されるよう、政府・政党に対する働きかけを含め、法案審議への対応を行っていく。また、自己都合離職者などの基本手当の水準回復や雇止め離職者に対する暫定措置の恒久化、マルチジョブホルダー(多重就労者)への適用など、雇用保険制度のセーフティネットが、すべての雇用労働者に対し十分に機能するものとなるよう取り組みを進めていく。
以 上