事務局長談話

 
2016年10月04日
「OECD多国籍企業行動指針に関するタワーセミコンダクター社及びタワージャズジャパン株式会社に対する問題提起に関する最終声明」に関する談話
日本労働組合総連合会 事務局長 逢見 直人

  1. 9月30日、日本のナショナル・コンタクト・ポイント(日本NCP※)は「OECD多国籍企業行動指針に関するタワーセミコンダクター社およびタワージャズジャパン株式会社に対する問題提起に関する最終声明」を発出した。当該労使による交渉終結前の「最終声明」発出は残念であるが、日本NCPの関与が未払い退職金の支払いなど労使交渉に一定の影響を与えたことは評価できるものと受け止める。

  2. 2014年7月31日、イスラエルに本社を置く半導体メーカーの日本法人であるタワージャズジャパン株式会社が西脇工場を突然閉鎖し、解雇問題が発生した。これを受けて連合兵庫・北播地協は地域ユニオン・タワージャズジャパン支部を設立し支援を開始した。同時に、本件がOECD多国籍企業行動指針に違反することを踏まえ、連合兵庫と連合本部は連携して、2014年8月18日に日本NCPに対して審理要請を行った。以降、イスラエルのナショナル・センター(HISTADRUT)を通じた経営への働きかけや、地方労働委員会の対応支援など、地域協議会、地方連合会、連合本部を挙げて取り組んできた。

  3. 日本NCPが会社側に対して「当事者を含む関係者との協議の場を設定する」ことを促したことで、一地域における工場閉鎖の問題を多国籍企業による国際労働問題に発展させ、退職金の支払いや再就職の斡旋など、組合側が求めていた対応を会社から引き出すことにつながった。日本における初の事例として、この経験を今後の労働者保護の取り組みにつなげていく必要がある。
     一方で、同社のCEOが労使交渉に出席したのは1度のみであることや、「平均賃金の三カ月分の退職一時金」の対応などの団体交渉が継続中であることなど、課題が残されている。それにもかかわらず、日本NCPが、一定の期間が経過したことや、「元従業員との協議の場を設けていることを確認した」ことを理由に「一連の対応を終結する」とする最終声明を発出するに至ったことは残念であり、より一層の対応改善を求めていかなければならない。

  4. 連合は、引き続き地方組織含め当該労組の取り組みを支援するとともに、国際労働紛争の解決に向けて日本NCPがより一層機能するよう、OECD多国籍企業行動指針に関する手続きの迅速化・最適化に向けた政府への働きかけを強化していく。


以上

※NCP(ナショナル・コンタクト・ポイント)…「OECD多国籍企業行動指針」の普及・実施、問題解決の支援のために、各国政府等に置かれている連絡窓口のこと。日本NCPは、外務省、厚生労働省、経済産業省により構成されている。