2016年06月03日
政府の「経済財政運営と改革の基本方針2016」に対する談話
日本労働組合総連合会
事務局長 逢見 直人
- 6月2日、政府は「経済財政運営と改革の基本方針2016(骨太の方針)」を閣議決定した。最低賃金の引き上げ、非正規雇用者の待遇改善、奨学金制度の拡充、保育士や介護人材の処遇改善など、連合が求めてきた政策と重なる点にも言及しているが、財源を含む実現に向けた道筋は具体性に欠ける。選挙を意識した聞こえの良い政策の羅列とも受け取れるものであり、その実現に向けた政府の姿勢には強い疑念を抱かざるを得ない。
- 方針では、成長と分配の好循環の実現に向け、「結婚・出産・子育ての希望、働く希望、学ぶ希望の実現」など、大きく5つの取り組み項目を挙げている。この中で、保育士や介護人材の処遇改善に取り組むことが示されたが、業務に見合った賃金水準への引き上げと長く働き続けられるキャリアアップの仕組みを構築するといった抜本的な処遇改善と、そのための財源確保が不可欠である。
教育の再生においては、はじめて給付型奨学金の検討が盛り込まれたが、検討に終始せず、来年度予算編成で十分な規模の予算を確保し、恒久的な制度として創設すべきである。
女性の活躍推進においては、性別役割分担意識の払拭に言及していない点は不十分である。また、「女性活躍加速のための重点方針2016」に記載されていた、性暴力の根絶やひとり親支援に関する記載も欠如している。人権が尊重され、女性が自らの個性と能力を発揮できるための具体策を求める。
- さらに方針では、経済・財政一体改革の推進に向け、主要な歳出改革の取り組みとして社会保障分野などを挙げ、「改革工程表に沿って着実に改革を実行していく」との考え方があらためて示された。しかし、その中に盛り込まれている外来診療の定額負担の導入や、介護保険における軽度者への給付見直しなどは、利用者のサービスに対するアクセスを損ない、さらなる給付増を引き起こしかねず、慎重な検討が必要である。
- 当面の経済財政運営の考え方では、国と地方を合わせた基礎的財政収支を2020年度に黒字化する目標は維持されたが、その目標達成に向けた具体的な道筋はいまだ示されていない。また、2017年度予算編成に向けては、消費税率引き上げが延期されたことに伴う税収減への対応をはじめとした財源確保策が示されておらず、政府が掲げる「ニッポン一億総活躍プラン」に盛り込まれた課題の解決などが絵に描いた餅で終わることが懸念される。それらの政策の実現や、社会保障の充実・安定化に向けた具体的な道筋を明確に示すことを強く求める。
- 連合は、「2017年度 連合の重点政策」を取りまとめ、政府・政党への要請行動を進めている。引き続き、政府に対して、すべての国民が将来に希望と安心を持てるよう、働く者・生活者視点での政策への転換を求めていくとともに、「働くことを軸とする安心社会」の実現に全力で取り組む。
以上