2016年06月03日
「日本再興戦略2016」に対する談話
日本労働組合総連合会
事務局長 逢見 直人
- 6月2日、政府は「日本再興戦略2016」を閣議決定した。「成長戦略第2ステージ」の課題として「新たな有望成長市場の創出」「生産性革命」「人材強化」を掲げ、その鍵となる「第4次産業革命」の実現に向けた規制・制度改革や人材の確保・育成などの施策を打ち出している。いずれも重要な課題ではあるが、働く現場の実態を十分に踏まえることなくして戦略の実効は伴わない。政府にはその認識に立って適切な対応を講じるよう求める。
- 「人材強化」に関しては、「働き方改革、雇用制度改革」として、「高度プロフェッショナル制度」の早期創設が掲げられているが、特別条項付き36協定締結時の上限時間規制など、実効ある長時間労働抑制策こそ導入すべきである。「同一労働同一賃金」に関しては、雇用形態間の不合理な格差の解消をはかるべく、労働政策審議会において早急に議論をスタートすべきである。
また、外国人材の活用に向け「日本版高度外国人材グリーンカード」創設が掲げられているが、「高度人材」の認定要件の安易な引き下げなどは行うべきではない。
- さらに、「女性の活躍推進」として、非正規雇用の女性の待遇改善や男性の暮らし方・意識の変革などの取り組みを掲げていることは概ね評価できるが、女性の活躍を阻害している大きな要因である性別役割分担意識に関する記載が欠如している点は不十分である。加えて、ダイバーシティ経営の促進を検討する際には、経営者や投資家の視点だけでなく、労働者の視点も含めた検討がなされるべきである。
労働力の確保は今後の日本にとって極めて重要な課題であり、成長戦略の要に位置づけられるべきである。特に保育・介護サービスは仕事と生活を両立できる社会の実現において不可欠である。それにもかかわらず、これらの人材確保に関する戦略上の位置づけは不十分といわざるを得ない。
- 「新たな有望成長市場の創出」における「世界最先端の健康立国」については、国民にとって望ましい目標と考えられる。しかし、そのための施策として掲げられている「公的保険外サービスの活用促進」については、公的保険の給付範囲縮小などにより、公平な医療・介護へのアクセスや国民生活の安心を損なうこととならないよう、慎重に検討する必要がある。
- 政府に求められているのは、安易な規制緩和や労働者保護ルールの改悪ではなく、経済・産業政策と雇用政策の一体的な推進によって、すべての働く者に良質な雇用・就労の機会を実現することである。連合は引き続き、ディーセント・ワークの実現、社会的セーフティネットの強化など、国民の暮らしの底上げ・底支えにつながる政策への転換を求めていくとともに、「働くことを軸とする安心社会」の実現に全力で取り組む。
以上