2016年05月24日
「ヘイトスピーチに関する法案」成立についての談話
日本労働組合総連合会
事務局長 逢見 直人
- 5月24日、ヘイトスピーチに関する法案(本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律案、以下「法案」)が衆議院本会議において可決・成立した(参議院先議)。連合は、かねてから、ヘイトスピーチなど人種差別・排他主義的な街宣活動や不当な行為を規制する法律の早期制定を求めてきた。今回の法案において国が差別の存在を認め、その対策の必要性を明記した点は前進であり、その成立については評価する。
- しかしながら、法案は人権教育や啓発活動を通じて問題の解消に取り組むと定めた「理念法」であり、罰則規定がないことは問題である。
加えて、差別的言動の対象が「専ら本邦の域外にある国若しくは地域の出身である者又はその子孫であって適法に居住するもの」に限定されている。とくに、「適法に居住するもの」と限定したことで、難民申請者など在留資格を有しない者が差別的言動を甘受しなければならない状況を生み出すおそれがある。これは、日本も批准している「人種差別撤廃条約」が、出入国管理法令上の地位にかかわらず人種差別に対する立法上の保障を求める趣旨を含むことに照らしても、不十分なものであるといわざるを得ない。
- この間、連合は、民進党と連携し、国会への意見反映に取り組んできた。その結果、法施行後における必要に応じた見直し検討の規定が附則に盛り込まれたこと、付帯決議において、「本邦外出身者に対する不当な差別的言動以外のものであれば、いかなる差別的言動であっても許される、との理解は誤りである」旨の内容が盛り込まれるなど、連合の意見が反映された。引き続き連合は、積み残された課題の解決に向けた法改正を求めてい
- 国内では、人種差別が許されない旨の理念を定めた基本法はなく、差別を解消するための具体的な施策も実施されていない。連合は、人権侵害に対する十分かつ迅速な解決と救済を目的とする「人権侵害救済法(仮称)」の早期制定を求めるとともに、差別を許さない社会の実現に向けて、引き続き全力で取り組んでいく。
以上