2016年02月10日
2016年度診療報酬改定に関する中医協答申についての談話
日本労働組合総連合会
事務局長 逢見 直人
- 2月10日、中央社会保険医療協議会(中医協/会長:田辺国昭)は、2016年度診療報酬改定に関する塩崎厚生労働大臣からの諮問に対し、18項目の附帯意見とともに答申を行った。継続課題である「地域包括ケアシステムの推進と医療機能の分化・強化、連携の促進」を重点的にめざす内容となったことは概ね評価できる。しかし、看護職の夜勤について、月平均夜勤時間にかかる規制が一部緩和されたことは、極めて残念である。
- 今回の診療報酬改定率は、診療報酬全体で0.84%引き下げ(本体:プラス0.49%、薬価・材料価格:マイナス1.33%)とされた。これを踏まえた改定項目のうち、[1]急性期医療の機能分化に向けた「7対1入院基本料」の算定要件見直しと退院支援の充実、[2]ADL(日常生活動作)の向上など質の高い医療の評価、[3]小児在宅医療や難病医療の拡充、[4]多剤・重複投薬の是正や後発医薬品の使用促進、[5]公費負担医療における診療明細書無料発行の促進などは、連合の考え方に沿ったものであり、評価できる。
- 一方、看護職の夜勤をめぐる議論過程では、診療側委員が月平均夜勤時間の大幅な規制緩和を要求してきた。連合を中心とする支払側委員の強い反対で緩和幅は縮小され、答申書の「附帯意見」でも検証の実施が明記されたが、夜勤可能な看護職に負担が集中する懸念は払拭されたとは言えない。連合は今後、改定により長時間夜勤が助長されていないかどうか把握するとともに、雇用・労働条件の悪化が見られた場合には、早急に規制緩和を撤回するよう強く求めていく。また、新たに「かかりつけ薬剤師・薬局」の考え方が創設されたが、果たすべき機能が適切に発揮されるのかどうか、今後の実効性を検証していくことが必要である。
- 連合はこの間、海員組合、経団連、健保連、協会けんぽ、国保中央会など支払側団体とともに、厚生労働大臣要請や共同意見書の提出など、連携した取り組みを進めてきた。次回の2018年度改定は、診療報酬と介護報酬の同時改定となる。地域包括ケアシステムの構築と持続可能な医療保険制度の確立に向けて、今回改定による影響の丁寧な検証が不可欠である。連合は、構成組織および支払側各団体と密に連携し、患者にとって安心・安全で納得できる医療のさらなる推進に向けて、引き続き取り組みを進めていく。
以上