事務局長談話

 
2015年12月24日
「雇用保険部会報告」等に対する談話
日本労働組合総連合会 事務局長 逢見 直人

  1. 12月24日、労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会(部会長:岩村正彦・東京大学大学院教授)は、「雇用保険部会報告」を取りまとめた。その内容は雇用保険制度を拡充する方向であり概ね評価できる。しかし、連合が繰り返し主張してきた基本手当の水準を2000年及び2003年改正前の水準に戻すことについて、「引き続き、今後の在り方について検討すべき」と先送りされた点は、課題が残る。

  2. 「報告」の主な内容は、(1)65歳以降に新たに雇用される者を適用対象とする雇用保険の適用拡大、(2)早期に再就職した場合に支給される再就職手当の給付率引き上げ及び特定受給資格者の基準の見直しなど給付の改善、(3)介護休業給付の給付率の40%から67%への引き上げおよび介護休業の分割取得など、育児・介護休業法の改正にあわせた給付の見直し、(4)失業等給付にかかる保険料率の2016年度以降12/1000への引き下げ(弾力条項発動後の保険料率は8/1000)などである。
    なお、失業等給付にかかる国庫負担は、暫定措置として法律本則(25%)に対し13.75%とされたままである。政府は、雇用保険法附則第15条の規定も踏まえ、求職者支援制度に関する国庫負担も含め1日も早く責任を持って法律本則に戻すべきである。

  3. また、労働政策審議会職業安定分科会雇用対策基本問題部会(部会長:阿部正浩・中央大学経済学部教授)は、12月18日、部会報告「今後の高年齢者雇用対策について」を取りまとめた。主として65歳以上の高齢者を想定し、シルバー人材センター事業について、いわゆる「臨・短・軽」要件を原則としながらも、都道府県知事が市町村ごとに指定する業種などでは、派遣・職業紹介に限り週40時間までの就業を可能とすることなどを主な内容とし、高年齢者雇用安定法の改正を求めている。高年齢者の雇用促進自体は否定しないものの、施策の具体化にあたっては、(1)65歳までの確実な雇用確保はもとより、65歳以上の就労ニーズの多様性、労働者保護を最大限尊重すること、(2)公的年金の支給開始年齢の引き上げ議論につなげないこと、(3)シルバー人材センター事業における労働災害や偽装請負などのトラブルの防止策を強化することなどが必要である。

  4. 今後、上記の各報告にもとづき、労働政策審議会職業安定分科会において雇用保険法及び高年齢者雇用安定法の改正に関する法律案要綱の審議が行われ、第190通常国会に法案が提出される見込みである。連合は、法案審議において、懸念点が解消されるよう働きかけを行うとともに、雇用保険の基本手当の水準回復や失業等給付の2016年度末までの暫定措置の恒久化、マルチジョブホルダー(多重就労者)への適用など、雇用保険制度がすべての雇用労働者にとってのセーフティネットとして機能するものとなるよう取り組みを強めていく。


以上