事務局長談話

 
2015年06月30日
政府の「経済財政運営と改革の基本方針2015」に対する談話
日本労働組合総連合会 事務局長 神津 里季生

  1. 6月30日、政府は、「経済財政運営と改革の基本方針2015(骨太の方針)」を閣議決定した。わが国経済は、景気が回復基調にある一方で、貧困と格差の拡大、不安定・低賃金労働者の増大などの深刻な課題を抱えたままである。方針全体は、このような現状の課題を直視せず、国民生活の底上げや不安の解消、雇用の安定と質の向上など、経済の好循環の実現のために真に必要な政策を欠くものであり、問題である。

  2. 方針では、重点課題として「女性活躍、教育再生をはじめとする多様な人材力の発揮」など4つを挙げている。この中で、女性・若者・高齢者・障がい者の就労支援、ハラスメントの根絶、子育て支援の充実、子どもの貧困対策の推進、幼児教育の無償化の段階的実施など、一歩前進ともいえる考え方が盛り込まれている。これらが画餅に帰すことのないよう、具体策の立案と十分な財源確保も含めた確実な実行が求められる。
    また、規制改革において重視する分野の一つとして「多様な働き方の促進」を掲げているが、すべての労働者に適用されるべき最低限の労働条件や、労働者保護ルールを規制改革の対象とするようなことは、当然あってはならない

  3. 「経済・財政一体改革」では、2018年度までの3年間を集中改革期間と位置づけ、改革努力のメルクマールとして2018年度のPB(基礎的財政収支)赤字の対GDP比を▲1%程度とする目安を設定しているものの、目安の拘束性や監視体制など実効面における財政規律の厳格化への踏み込みは不十分であり、政府の掲げる2020年度までのPB黒字化の目標達成は、依然として不明瞭のままである。

  4. さらに方針では、歳出改革の重点分野の一つとして社会保障を挙げ、関係費の伸びを「高齢化による増加分と消費税率引上げとあわせ行う充実等に相当する水準におさめることを目指す」との考え方が示された。具体的な取り組みのうち、介護制度における軽度者への給付の見直し、医療保険の給付範囲見直し、医療の外来時定額負担、介護納付金の総報酬割、生活保護制度の更なる見直しなどについては、本来必要なセーフティネット機能の弱体化につながることのないよう、社会保障給付の効率化と安定財源の確保を同時に進めなければならない。
    また、雇用保険の国庫負担の当面の在り方について、検討するとしているが、国庫負担は雇用の安定に対する国の責務である。これを放棄することに等しい停止や引き下げは、決してあってはならない。

  5. 連合は、「2016年度 連合の重点政策」を取りまとめ、政府・政党への要請行動を進めている。連合は、引き続き、政府に対して、すべての国民が将来に希望と安心を持てるよう、働く者・生活者視点での政策への転換を求めていくとともに、「働くことを軸とする安心社会」の実現に全力で取り組む。   


以上