事務局長談話

 
2015年05月28日
医療保険制度改革関連法案の成立に対する談話
日本労働組合総連合会 事務局長 神津 里季生

  1. 5月27日、参議院本会議で、「持続可能な医療保険制度を構築するための国民健康保険法等の一部を改正する法律案」が、自民、公明、維新などの賛成多数で可決、成立した。被用者保険関係5団体が強く反対した後期高齢者支援金の全面総報酬割で生じる国費の多くを国保の財政支援に活用する、いわゆる「国費の肩代わり」については、国会審議においても、政府から納得できる説明は得られなかった。国民医療費の最大の支え手である被用者保険の被保険者、事業主、保険者の主張が顧みられなかったことは、医療保険制度への信頼を損ねるものであり、将来に禍根を残したと言わざるを得ず、極めて遺憾である。

  2. 法律において、国民健康保険の保険者を都道府県と市町村などとし、財政責任は都道府県、実務は市町村が担うことや、協会けんぽに対する国庫補助率16.4%の維持などは、連合の考え方と概ね一致しており、評価できる。しかし、医療費適正化対策が不十分なまま、国保に対する国の財政責任を被用者保険の負担増に転嫁することは、改定ルールを無視した標準報酬月額の上限引き上げも相まって、今後も社会保険への信頼が維持されるのか疑問である。また患者申出療養については、安全性・有効性の担保や国や企業の責任のあり方など、多くの懸念が残されたまま、詳細は今後の中央社会保険医療協議会での検討に委ねられた。

  3. 連合は、「国費の肩代わり」の撤回を求めて、経団連、日商、健保連、協会けんぽと共同で2回にわたり意見を表明してきた。また、衆議院厚生労働委員会で意見陳述を行い、負担の納得性・公平性の確保が重要であることを強調し、被用者保険による「国費の肩代わり」の撤回や、高齢者医療の抜本改革の実現など、連合の対応方針にもとづき意見を主張した。参議院厚生労働委員会の附帯決議には、「被用者保険の保険者及び被保険者に十分な説明を行い、その理解と納得を得るよう努めること」などが盛り込まれたことは評価するが、法案修正に至らなかったことは極めて残念である。

  4. 今後も高齢化が急速に進行する中、すべての国民が、将来にわたり安心して良質な医療を受けるためには、国民皆保険の堅持、保険者機能発揮、被用者の納得性確保を通じて持続可能な医療保険制度の確立が不可欠である。そのため連合は、高齢者医療の抜本改革を通じた公的医療保険制度の再構築と、「働くことを軸とする安心社会」の実現をめざし、構成組織・地方連合会が一体となり、引き続き取り組みを進めていく。


以上