2015年01月28日
産業構造審議会知的財産分科会特許制度小委員会の報告書に対する談話
日本労働組合総連合会
事務局長 神津 里季生
- 1月28日、特許庁の「産業構造審議会知的財産分科会特許制度小委員会」(委員長:大渕哲也東京大学大学院法学政治学研究科教授)は、小委員会の報告書となる「我が国のイノベーション促進及び国際的な制度調和のための知的財産制度の見直しに向けて」を取りまとめた。報告書は、職務発明に関する特許を受ける権利の帰属を従業者から使用者(法人)に改めるなど職務発明制度の大幅な見直しを提言したものである。
その中で、従業者に対する発明のインセンティブの付与については、これを法律で使用者に義務付けるとしており、現行制度と同等の権利が確保されるものと受け止める。
- 報告書には、(1)使用者に対し、勤務規則等の定めに基づき、発明のインセンティブとして、発明成果に対する報いとなる経済上の利益を従業者に付与する義務を課すことを法定する、(2)特許を受ける権利については、現行制度を改め、初めから使用者に帰属する、(3)政府は、本小委員会等の場において関係者の意見を聴いて、インセンティブ施策についての使用者と従業者の調整の手続(従業者との協議や意見聴取等)に関するガイドラインを策定し、使用者はその手続に従って、従業者との調整を行うこと、などが盛り込まれた。
- 連合は、これまでの小委員会において、従業者帰属を維持すべきとの主張をしてきたが、それ自体は報告書に反映されなかった。しかしながら、上記(1)(3)は連合の考えに概ね沿った内容となった。さらに、連合の主張を踏まえ、本見直しはインセンティブの切り下げを目的とするものではないこと、従業者には現行の職務発明制度における法定対価請求権と実質的に同等の権利が保障されること、新たに策定されるガイドラインは労使代表が参加する場で検討されることが小委員会で確認され、報告書に盛り込まれた。
- 今後は、報告書を踏まえ、特許法改正の準備が始まることとなる。まずは、政府の策定する法律案が報告書の趣旨を十分反映したものとなるよう、引き続きその動向を注視していく。
以上