2014年12月24日
「独占禁止法審査手続についての懇談会報告書」に対する談話
日本労働組合総連合会
事務局長 神津 里季生
- 12月24日、内閣府の「独占禁止法審査手続についての懇談会」(座長:宇賀克也東京大学大学院法学政治学研究科教授)は、公正取引委員会が行う行政調査手続に関する検討結果について報告書を取りまとめた。報告書には、独占禁止法違反被疑事件に関する行政調査において事件関係人が十分な防御を行うことを確保する観点から、これまで不明確であった立入調査や供述聴取における実務上の取り扱いを指針等に明記して公表することなどが盛り込まれた。これにより、実態解明機能を確保しつつ、事件関係人の防御の確保や行政調査手続の適正性・透明性の確保という点で一定の改善がはかられるものと受け止める。
- 報告書には、懇談会の検討結果として、(1)立入調査における弁護士立会いや提出物件の謄写の取り扱い、(2)供述聴取における聴取時間の目安や休憩時間の適切な確保、(3)供述聴取に係る苦情を受け付ける仕組みの整備などを指針等に明記して公表するとともに、必要な事項について書面を用いるなどして事業者および供述人に伝えることなどが盛り込まれた。また、調査を行う際の標準的な行政調査手続についての指針等を策定し、公表することも盛り込まれた。
連合は、懇談会において、実態解明機能の確保に留意しつつ、審査手続における適正手続保障の観点を中心に、事業者・従業者双方を対象とした防御権の確保を検討するべきとの主張をしてきた。報告書に盛り込まれたこれらの内容は、懇談会における連合の主張に概ね沿ったものであり、評価できる。
- 一方、連合が強く求めてきた、供述聴取における全過程の録音・録画の導入については、供述人の萎縮効果やそれによる実態解明機能への影響などを懸念する意見も出された。懇談会において、現状の仕組みの下でこれを認めるべきとの結論に至らなかったことは残念である。今後、実態解明機能を促進する仕組みが検討される際などに改めて導入を求めていく。
- 今後、公正取引委員会は行政調査手続に関する指針等を策定し公表することとなる。加えて、政府は一定期間が経過した後にフォローアップを実施し、その結果についても公表することとしている。連合は、本報告書に基づき指針等が整備されるとともに、行政調査手続が適正・適切に行われるよう、今後の実施状況を注視していく。
以 上