2014年10月24日
男女雇用機会均等法第9条3項に関する最高裁判決についての談話
日本労働組合総連合会
事務局長 神津 里季生
- 昨23日、最高裁判所第一小法廷(桜井龍子裁判長)は、理学療法士の女性が妊娠中の軽易な業務への転換に際して降格されたことに関して、勤務先の広島市の病院に損害賠償を求めていた事件について、原判決の破棄・差し戻しとの判決を下した。この事件は、降格が男女雇用機会均等法第9条3項(注)に違反するものか否かが問題となっていた事件である。マタニティハラスメントが社会的に問題となっている中で、均等法第9条3項に具体的に言及した本判決は、画期的な判断であり、子どもを産み育てながら女性がキャリアを維持しつつ働き続けていくための後押しとなるものである。
- 本判決は、均等法第9条3項の規定は強行規定として設けられたものであり、労働基準法第65条3項に基づく「妊娠中の軽易業務への転換」を契機として降格させる事業主の措置は、原則として均等法第9条3項の禁止する不利益取扱いに当たるとした。そして、例外的に不利益取扱いに当たらないのは、[1]自由な意思に基づいて降格を承諾したものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するとき、[2]業務上の必要性からの支障があり、同項の趣旨・目的に反しないものと認められる特段の事情が存在するときであるとした。実質的に事業主に立証責任を転換した点など、現場の人事・労務管理に関わる基本を明示した意義も大きい。
- 労働基準法や男女雇用機会均等法、育児・介護休業法など、妊娠・出産しながら働き続けるための法規定は整備されてきている。しかし、法や制度の認知度の低さや長時間労働が常態化している職場の実態などを背景に、連合の労働相談にもマタニティハラスメントに関する相談が数多く寄せられている。これらの状況に対して、当事者である女性労働者が声を上げて一石を投じたことは、法や制度を実効あるものとし、マタニティハラスメントをなくしていくための大きな一歩である。
- 「女性の活躍推進」が大きくクローズアップされる中で、女性が普通に働き続けることができる職場環境が真に整備されているのかということが問われている。連合は、法に定められた妊産婦保護規定の周知・徹底、法の実効性の確保などを政府に求めるとともに、「働くみんなのマタハラ手帳」などを活用した意識啓発や長時間労働の解消など、誰にとっても仕事と生活の調和が可能となる社会に向けた取り組みを進めていく。
注)男女雇用機会均等法第9条3項:事業主は、その雇用する女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、労働基準法(昭和22年法律第49号)第65条第1項の規定による休業を請求し、又は同項若しくは同条第2項の規定による休業をしたことその他の妊娠又は出産に関する事由であつて厚生労働省令で定めるものを理由として、当該女性労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
以上