事務局長談話

 
2014年07月10日
「法制審議会 新時代の刑事司法制度特別部会」の取りまとめにあたっての談話
日本労働組合総連合会 事務局長 神津 里季生

  1.  7月9日、「法制審議会 新時代の刑事司法制度特別部会」(以下「特別部会」)において「新たな刑事司法制度の構築についての調査審議の結果」(以下「答申案」)が取りまとめられた。答申案には、多くの課題は残るものの、改革の出発点として最低限必要な事項を担保し得たと認め、速やかに第一歩を踏み出す方向に舵を切るべきと判断する。

  2.  「取調べの録音・録画制度」については、法制度として義務化される録音・録画の範囲が裁判員裁判対象事件と検察独自捜査事件に限られた点は誠に残念である。しかし、義務化の対象外とされた事件以外の取調べであっても、検察の運用によって可能な限り幅広く録音・録画がなされること、そして、法施行後にこの理念に則った見直しが行われることが確認されたことは、大きな改革の第一歩になるものである。本答申に基づく改正法の早期国会提出と成立を心から望む。

  3.  また、増加傾向にある「振り込め詐欺」などの犯罪に対応することを目的に「通信傍受」の対象範囲が拡大された。具体的な制度設計や実際の運用に際しては、通信傍受に関わる労働者に対して過度な負担が生じないこと、憲法上の重要な権利である「通信の秘密」が侵害されることがないよう強く求める。
     加えて、「身柄拘束の在り方」については、現在の運用が適正か否かという認識の違いが最後まで埋まらなかったが、必要最小限の範囲を超えて身柄拘束が過剰に運用されるケースがあることは当事者の体験談からも明らかである。今後はより適正な運用とともに、身柄拘束の判断にあたっての考慮事情が法律上一層明確にされなければならない。

  4.  連合は特別部会の中で、手続きの透明性や国民への説明責任が担保された、国民にもわかりやすい刑事司法制度の実現を求めてきた。連合は、一般の国民の目線から改革の行方を注視していくとともに、関係機関や関係者、とりわけ当事者である取調べ機関や裁判所に対しては、改革の原点を忘れることなく、不断の努力により国民が求める真の改革が完遂されることを強く求めていく。



以上