2014年06月24日
「日本再興戦略」改訂2014に対する談話
日本労働組合総連合会
事務局長 神津 里季生
- 6月24日、政府は、「日本再興戦略」改訂2014を閣議決定した。「世界でトップレベルの雇用環境」の実現を掲げ、労働者保護ルールの改悪を成長戦略の柱の一つに位置づけている。その方向性は、働く者の犠牲の上に、投資家や企業が世界で一番稼ぎやすい国づくりをめざすものであり、容認できない。
- 連合は、働く者の代表として、「労働者保護ルールは、働く者が人たるに値する生活を営むための最低限のルールであり、経済的規制と同列におくべきではないこと」「劣化した雇用の立て直しを日本再興の中心に据え、格差社会の是正やボトムアップを通じて経済の好循環をはかること」などを政府・与党に要請してきた。働く者の声を聞かずに、「労働時間の長さと賃金のリンクを切り離した新たな労働時間制度」の創設や技能実習制度の拡充を含む外国人材の受入れの拡大、解雇の金銭解決制度の検討などが盛り込まれたことは極めて遺憾である。
- 社会保障関係については、人材の確保の観点から、問題がある。外国人技能実習制度に介護を加えることや、外国での保育士資格の活用は、業務の専門性などを全く理解しておらず、撤回を求める。なお、子育て支援員の創設や、放課後子ども総合プランについては、実施水準の低下につながらないよう、慎重に検討すべきである。また、公的年金積立金の運用が日本経済に貢献することとしているが、運用はもっぱら被保険者の利益ために行われるべきであり、日本再興戦略に記載することは不適当である。
女性の活躍促進においては、新たな法的枠組みの構築をはじめとした施策が挙げられているが長時間労働の是正、性別役割分担意識の払拭、雇用における男女間格差の解消が最も重要であり、その視点が欠落していると言わざるを得ない。具体的な内容においても、労働法制の改悪につながりかねず、問題である。
- 昨年の政労使会議でまとめられた共通認識に立ち、経済の好循環の取り組みを継続するとしているが、非正規労働者のキャリアアップ・処遇改善、人材の育成、公正な取引関係の実現などについてのフォローアップはいまだに行われていない。政労使会議を速やかに再開し、結果の把握と評価及び今後の取り組みについて議論を深めるべきである。そうした取り組みが進まなければ、「成長の果実の全国波及」は画餅に帰す。
- 今、政府に求められているのは、競争を勝ち抜きトップをめざす一握りの人にメッセージを発することではなく、大多数の真面目に働く人たちが将来に希望と安心を持てる道筋を示すことである。そのためには、良質な雇用の創出、ディーセント・ワークの実現、社会的セーフティネットと所得再分配機能の強化など、国民の暮らしの底上げをはかる政策を最優先にすべきである。連合は、すべての働く者の力を結集し、労働者保護ルールの改悪の動きに対峙していくとともに、「働くことを軸とする安心社会」の実現にむけて全力で取り組む。
以上