事務局長談話

 
2025年12月19日
与党「令和8年度税制改正大綱」に対する談話
日本労働組合総連合会
事務局長 神保 政史

1.日本の構造課題解消に向けてさらなる税制改革が必要
 12月19日、自民党と日本維新の会は「令和8年度税制改正大綱」(以下、大綱)を決定した。大綱が、①足元の物価高への対応として、昨年の自民・公明・国民民主の三党合意にもとづく個人所得税の課税最低限の引き上げや、通勤手当の非課税限度額の引き上げなどを行うとしたこと、②米国の関税措置が自動車産業に及ぼす影響を緩和するとともに、自動車取得時における負担を軽減・簡素化するため環境性能割を廃止するとしたことは評価できる。しかし、所得格差の拡大や貧困の固定化といった日本の構造課題解消に向けては、さらなる税制改革に取り組む必要がある。くわえて、防衛力強化に係る防衛特別所得税の課税期間は2027年からとされたが、2026年4月から増税となる法人税・たばこ税とあわせ、その必要性や妥当性について国民へ丁寧な説明を行うべきである。

2.金融所得は将来的な総合課税化を展望しつつ税率構造を段階化すべき
 ガソリン・軽油の暫定税率廃止のための財源確保に向け、極めて高い所得に対する負担の適正化のための措置が設けられるが、分離課税が抱える課題である、いわゆる「一億円の壁」解消にはほど遠い。また、NISA制度のつみたて投資枠の対象年齢撤廃は、実質的に親の資産運用に活用される「第二口座」化により所得格差の拡大を助長するおそれがある。暗号資産取引から生じる所得の分離課税化も行われるが、税による所得再分配機能を高めるためには、金融所得は将来的な総合課税化を展望しつつ、税率構造を段階化すべきである。

3.中低所得者への恒久的な支援策として給付付き税額控除の仕組みの早期構築を
 個人所得税の課税最低限は、三党で合意した178万円に引き上げられ、対象者も給与所得者の約8割まで拡大された。ただし、この引き上げは、足元の物価高で厳しい状況にある中低所得者に配慮したものであることや、給付付き税額控除の議論の中で中低所得者層の給付・負担のあり方を検討していくことを踏まえ、2027年までの時限措置とされた。恒久的で効果的な中低所得者に対する支援策として、給付付き税額控除の仕組みを早期に構築する必要がある。

4.連合は「公平・連帯・納得」の税制改革実現に総力をあげて取り組む
 連合は、次期通常国会において徹底した議論を求めるとともに、構成組織・地方連合会、連合出身議員政治懇談会、立憲民主党、国民民主党、連合フォーラム議員と連携し、働く者・生活者の立場に立った「公平・連帯・納得」の税制改革実現に向けて取り組んでいく。

以 上