2025年06月18日
社会保険労務士法改正法の成立に対する談話
1.社労士業務の明確化をはかる改正も労働者保護の観点で懸念が残る
6月18日、参議院本会議において社会保険労務士法改正法が可決・成立した。改正法は社会保険労務士(以下、社労士)の業務の明確化をはかるものであるが、社労士による正常な労使関係を損なう行為がいまだ生じている状況を踏まえれば、労働者保護の観点で懸念が残る。また、改正法は議員立法として提出されて成立したが、労働者や集団的労使関係に影響を及ぼしかねない内容が含まれていることから、本来であれば労働政策審議会の議を経るべきである。
2.社労士の問題行動の正当化や審判実務の混乱を招かぬような規制整備を
改正法では、労働関係法令や労働協約などの遵守状況を監査すること、すなわち「労務監査」が社労士の業務に含まれることを法律上明らかにするとしている。しかし、社労士試験には労働組合法などの科目がなく、「労務監査」を行いうる知識を十分に有しているかは疑義がある。むしろ一部の社労士の問題行動が「労務監査」として正当化されるおそれがある。
また、改正法には、社労士が労働審判手続に補佐人として出廷できる旨を明確にすることも含まれている。社労士による団体交渉への不当介入が生じている状況に鑑みれば、労働審判の場でもその介入により実務が混乱することも懸念される。
これらの懸念を業所管官庁たる厚生労働省および業界団体は真摯に受け止め、その解消に向け各種規制の整備や自主規制機能の強化などを確実に実施すべきである。
3.社労士の使命に反するような行動が生じることの無いよう求めていく
社労士の使命は、法1条にある通り「労働及び社会保険に関する法令の円滑な実施」を通じて「事業の健全な発達と労働者等の福祉の向上」をはかることである。連合は、団体交渉への不当介入や不適切な情報発信の防止も含め、社労士の使命に反するような行動が生じることのないよう注視するとともに、実効的な規制の確立に向け厚生労働省および業界団体に求めていく。
以 上