2025年05月16日
「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」および「受託中小企業振興法」の成立に伴う談話
1.中小企業等での持続的な賃上げにつながるものである
5月16日、「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払い遅延等の防止に関する法律(中小受託取引適正化法/旧:下請法)」および「受託中小企業振興法(振興法/旧:下請振興法)」は、施行日を「2026年1月1日」としたうえで、参議院本会議において賛成多数で可決・成立した。2026春季生活闘争の前段での法施行が実現したことは、中小企業等での持続的な賃上げに向けた社会的な環境整備につながる。
2.適切な価格転嫁・適正取引につながる改正内容
中小受託取引適正化法では、①協議を適切に行わない代金額決定の禁止(価格据え置き取引などへの対応)、②手形払等の禁止、③運送委託の対象取引への追加(物流問題への対応)、④適用逃れを防ぐため適用基準に従業員基準を追加、⑤問題行為に対する所管省庁の指導・助言権限の付与と申告者への報復措置禁止の追加、⑥上下関係を想起させる「下請企業」を「中小受託事業者」へ用語を変更するなどの改正内容が盛り込まれている。発注者・受注者の対等な関係に基づき、サプライチェーン全体で適切な価格転嫁を定着させるとともに、賃金や物価が安定的に上昇する新しい時代にあったルールづくりに資するものとして評価できる。
3.取引関係の改善につながる改正内容
振興法では、①多段階の事業者が連携した取り組みの支援、②国・地方公共団体の責務規定新設、③主務大臣の権限強化・勧奨、④発荷主~運送の取引と従業員の大小関係がある委託事業者を適用対象に追加などの改正内容が盛り込まれている。発注事業者と中小受託事業者との取引関係改善と、受託中小企業振興に効果を期待する。
4.継続的な課題への対応と法の適用対象にとどまらない取り組みの広がりを
今般の法改正で対応した事項以外にも、知的財産・ノウハウの適正化、金型の無償保管に係る課題、電磁的書面交付、違反行為の是正後の勧告、公正取引委員会の人員の増員や関係省庁間の連携の強化など、継続的な課題への対応と改正趣旨の社会全体への波及が必要である。附帯決議を踏まえ、ガイドラインや運用基準などで考え方を示す必要がある。また、約束手形の廃止など、本法の適用対象にとどまることなく、法の趣旨を踏まえた取り組みを社会全体に広げていくことが必要である。連合は、引き続き、適切な価格転嫁・適正取引を浸透させるとともに、持続的な賃上げと格差是正の実現に全力で取り組む。
以 上