2025年03月12日
特定技能制度および育成就労制度の基本方針などの閣議決定に対する談話
1.基本方針は改正法の趣旨が一定反映されるも懸念が残る
政府は3月11日、新たな特定技能制度および育成就労制度の基本方針と、既存の特定技能制度における分野別運用方針の一部変更について閣議決定した。基本方針は、昨年6月に成立した「入管難民法及び技能実習法改正法」における制度の適正化という趣旨を一定反映するものだが、労働者保護や議論のプロセスなどに懸念が残る。
2.「在籍型出向」を含め基本方針に関する十分な議論がなされなかったことは課題
「基本方針」には、特定技能制度および育成就労制度の意義や受け入れ企業・行政などの役割、外国人労働者に求められる技能や日本語能力の水準など、制度の根幹となる基本的事項が示されている。「基本方針」の内容について、労使などが参画する有識者会議で議論されたことは透明性確保の観点から一歩前進であるが、特定技能制度において雇用責任が曖昧になりやすい「在籍型出向」を例外的に認めることも含め、極めて短い期間で議論が行われた。両制度の適正化を果たすためにも、十分に議論を尽くすべきである。
3.「訪問介護」をはじめ制度の適正運用に向けて監督指導を徹底すべき
「分野別運用方針」の変更により、「介護分野」では「訪問介護」への従事を認めることとなった。「訪問介護」は居宅での1対1のサービス提供となるため、介護事業所での実務経験や一定期間の責任者の同行などの要件を課したが、具体的な内容を事業者の判断に委ねるものもある。また、「外食業分野」では風営法の許可を受けた旅館などにおいて「接客」などへの就労を可能とする改正がなされたが、禁止されている「接待」との境界の曖昧さなどの問題もある。制度の適正運用に向けて監督指導を徹底するとともに、不適正事案に対しては受け入れ停止などの厳格な措置を講じる必要がある。
4.適正な処遇確保など改正法の実効性を高める政省令などの検討を
今後、基本方針などにもとづき、新制度における具体的な受け入れ分野や人数などの検討も進められる。両制度を安易な外国人労働者の確保策とすることなく、改正法の実効性を高める観点から、外国人労働者の適正な処遇確保や外国人育成就労機構の体制整備も含めて一層丁寧な議論を行うべきである。連合は、国籍にかかわらずすべての労働者が安心して働き暮らすことのできる社会の実現に向けて全力で取り組んでいく。
以 上