2025年03月07日
早期事業再生法案の閣議決定に対する談話
1.金融債務に限定した事業再生だが労働者保護の観点で懸念がある
政府は3月4日、「円滑な事業再生を図るための事業者の金融機関等に対する債務の調整の手続等に関する法律案」を閣議決定した。本法案は、倒産前の状態にある事業者の早期の事業再生に向け、債務整理における全員一致の要件を緩和し、多数決による金融債務の早期整理を可能とする制度を創設するものである。本制度は、あくまでも金融債務に限定しているものの、これまでの他の手続による事業再生で人員整理や労働条件の引き下げなどが頻発している実態があることからすれば、労働者保護の観点で懸念がある。
2.事業再生における労働組合等との事前協議のルールの整備が重要
本法案にもとづく金融債務の整理の制度は、申請事業者からの早期事業再生計画などを第三者機関が確認した上で、金融機関などで構成される対象債権者集会での多数決決議が行われ、同決議の裁判所の認可により債務整理が可能となる仕組みである。労働者の雇用や労働条件などの保護をはかるためには、(1)早期事業再生計画の策定時において、労働組合等に対する事前の情報提供と協議のルールを整備すること、(2)早期事業再生計画や債務調整の必要性などを確認する第三者機関や、手続を主導する手続実施者については指定要件などを厳格に定めること、(3)対象債権者集会の決議や裁判所の認可が雇用や労働条件の変更・決定にかかわる労働協約や労働組合等との協議内容に対して法的な影響を及ぼさないことを明確化することが重要である。
3.事業再編時の労働者保護ルールの整備などに向けて全力で取り組む
事業の維持・発展には労働者による理解と協力が不可欠であるが、実際の事業再編時には、整理解雇や希望退職、賃金の切り下げなどが行われることが少なくない。そのため、労働組合等の手続関与の保障などを通じ、労働者の雇用などの保護をはかることが極めて重要である。連合は、国会における法案審議において労働者保護をはかるための対策が明確になるよう連合出身議員政治懇談会、連合フォーラム議員などと連携するとともに、事業再編時の労働者保護ルールの強化に向け、構成組織・地方連合会と一体となって全力で取り組む。
以 上