2025年01月28日
「担保法制の見直しに関する要綱案」に対する談話
1.労働債権などの保護につながる仕組みの創設は意義あるもの
1月28日、法制審議会担保法制部会(部会長:道垣内弘人専修大学大学院教授)は、2021年以降約4年にわたる議論を重ね、「担保法制の見直しに関する要綱案」を取りまとめた。「要綱案」は、動産や債権を担保として活用する譲渡担保権等に関するルール全般を明確化するとともに、集合動産および集合債権(以下、集合財産)譲渡担保権については労働債権などの一般債権者を保護するための仕組み(以下、破産財団への組入義務)を盛り込んだ。適用範囲が限定的ではあるものの、担保制度において労働債権の保護につながる仕組みが創設されることは意義がある。
2.譲渡担保権等に関する全般的なルールの明確化は労働者保護の観点でも重要
「要綱案」は、譲渡担保権等の内容や効力(担保権の及ぶ範囲)、企業が債務不履行に陥った際の実行(担保権を設定した財産を強制的に売却し、収益を回収)時の取り扱いなどの明確化を主な内容としている。破産財団への組入義務のほか、①担保権実行の際に事業継続が阻害されないよう裁判所による担保権実行禁止命令等の規定を設けること、②集合動産譲渡担保権の及ぶ範囲が広がりすぎないよう実行通知によって確定させることなどが盛り込まれた。これらの規定は、担保権者に一定の制約を課すものであり、労働者保護の観点からも重要である。
3.破産財団への組入義務の枠組みの実効性を高めることが必要
連合は、労働債権を担保権・質権等に優先させる特別な先取特権の創設や、労働債権への弁済を政策的に優先させる仕組みなどを求め、部会での意見反映に加え、シンポジウムの開催、パブリック・コメント対応などを行ってきた。その結果、幅広い担保設定によって担保権の範囲が広がりかねない集合財産については、一般債権者の弁済に充てるために担保権者の回収額の一定割合を破産財団に組み入れる義務が盛り込まれた。労働債権などの一般債権者への弁済の実効性を高めるためには、破産財団への組入対象範囲の拡大や新たな供託制度による保全対策の強化などが必要である。
4.倒産時における労働債権保護の強化に向けて全力で取り組む
今後、「要綱案」を踏まえて法案化の作業が進められる。労働債権は、労働者やその家族の生活を支える極めて重要なものであり、社会政策的に特別に保護する必要性が高いものである。そのため、譲渡担保権に限らず、担保権・質権等全体に優先させる先取特権の創設が必要である。連合は、倒産時における労働債権保護の強化に向けて、構成組織・地方連合会と一体となり全力で取り組みを進める。
以 上