2024年12月25日
医師の偏在是正対策や高額療養費制度の見直しなどに対する談話
1.医師偏在対策に保険料を財源とする経済的手法は問題
政府は12月25日、社会保障審議会(医療保険部会、医療部会)での議論を踏まえ、医師偏在対策や医療DX推進などの方向性や高額療養費制度の見直しを決めた。この中には、医師偏在対策として、医師不足地域における医師への手当を増額する財源を、保険者からの拠出で賄う経済的手法が盛り込まれている。しかしこれは、保険給付との関連性が乏しい施策の財源に保険料を充てるものであり、問題である。また高額療養費制度の見直しについては、すべての被保険者の保険料負担軽減の観点から、自己負担限度額を引き上げるものであり、今後、患者への影響を注視する必要がある。
2.医師偏在対策は施策の効果検証とさらなる規制的手法を検討すべき
人口構造が変化する中、切れ目のない医療提供体制の確保に向けて、医師偏在対策は重要である。今回の医師偏在対策には、外来医師多数区域での新規開業に対する規制強化や、医師少数区域での勤務経験を管理者要件とする医療機関の対象拡大など、規制的手法が盛り込まれた。今後は、こうした施策の実効性を確保するとともに、効果検証が求められる。また、診療科間の偏在対策が盛り込まれていないことから、さらなる規制的手法による施策を検討すべきである。
3.高額療養費制度の見直しによる患者への影響把握が必要
高額療養費制度は、2015年の見直し時に比べ、実効給付率が上昇していることなどを踏まえ、自己負担限度額の段階的な引き上げと、所得区分の細分化が行われる。あわせて、70歳以上が対象の外来にかかる限度額も引き上げられる。自己負担は、公平性や納得性の観点から、給付と負担のバランスの確保が求められる。今後、丁寧な周知とともに、患者への影響把握が必要である。また医療DX関連では、電子カルテ情報を共有するシステムの運用費用を患者・被保険者も一定負担する方向性が示されたが、普及状況を見極めつつ、納得性の確保など丁寧に議論されなければならない。
4.社会保険料の活用は給付と負担との関係性を明確にすべき
今回の決定を踏まえ、次の通常国会に医師偏在対策および医療DX関連の改正法案が提出される予定である。高齢化や医療の高度化により、今後も医療費の増加が見込まれる一方、医療保険財源には限りがある。社会保険料の活用は、給付と負担の関係性が明確でなければならず、税との性格の違いを踏まえ、それぞれの目的に応じた施策が求められる。連合は、被用者保険関係団体とも連携しつつ、被保険者・患者・提供者の立場から、連合出身議員政治懇談会、連合フォーラム議員への働きかけなどを通じて、国会審議での意見反映に向けて全力で取り組んでいく。
以 上