事務局長談話

 
2024年12月25日
社会保障審議会年金部会における議論の整理に対する談話
日本労働組合総連合会
事務局長 清水 秀行

1.被用者保険の適用拡大の前進には一定の評価
 社会保障審議会年金部会(座長:菊池馨実早稲田大学理事・法学学術院教授)は12月25日、「議論の整理」を取りまとめた。公的年金制度の見直しは5年ごとに実施されており、社会保障審議会医療保険部会においても、被用者保険の適用拡大に関する議論が行われている。被用者保険の適用要件については、週20時間以上の労働時間要件が残ったものの、企業規模要件、賃金要件、個人事業所の業種要件の撤廃が示されたことは一定の評価ができる。

2.第3号被保険者制度の将来的な廃止が明示されず遺憾
 働き方やライフスタイルが多様化する中で、配偶者の働き方などにより第3号被保険者に該当するかが決まる現行制度は、中立的な社会保険制度とはいえない。また、女性のキャリア形成を阻害し、男女間賃金格差を生む原因の一つと指摘されてきた。働き方などに中立的な社会保険制度の構築にあたり、連合をはじめ年金部会の他の委員からも将来的な廃止を求める意見が複数あったにもかかわらず、「議論の整理」に明示されなかったことは遺憾である。第3号被保険者制度をめぐる論点についての国民的な議論の場が必要であるとされたことから、将来的な廃止に向けて、速やかに検討の場を設置し継続的に議論することが不可欠である。

3.マクロ経済スライドの調整期間の一致についての議論は不十分
 年金部会では、厚生年金と基礎年金のマクロ経済スライドの調整期間を2036年度で一致させ、基礎年金の給付水準を将来的に上昇させることが提案された。「議論の整理」ではさらに検討を深めるとされたが、将来的に基礎年金の給付に必要となる国庫負担財源が確保されていないこと、国民年金の拠出期間の延長を早々に断念したこと、給付水準が低下する厚生年金受給者への影響といった課題があることなどから、厚生年金の拠出者の納得性を得られないままである。議論が不十分な中での調整期間の一致は行うべきではない。

4.就労を阻害せず働き方などに中立的な制度の構築を
 次期通常国会に年金法改正法案が提出される予定である。連合は、被用者保険の適用拡大の着実な実施、第3号被保険者制度の将来的な廃止、基礎年金の給付水準底上げなどについて、連合出身議員政治懇談会、連合フォーラム議員を通じた国会審議への意見反映や世論喚起などの取り組みを強化していく。

以 上