2024年12月24日
厚生労働省「労働基準関係法制研究会」報告書に対する談話
1.労働者保護の姿勢が見られるも規制緩和の方策も示されている
12月24日、厚生労働省「労働基準関係法制研究会」(座長:荒木 尚志 東京大学大学院法学政治学研究科教授)は、労働基準法などの見直しに関する報告書を取りまとめることとした。報告書では「労働時間法制」や「労使コミュニケーション」、労働基準法上の「労働者」といった論点毎に見直しの方向性が整理された。その内容は「労働からの解放の規制」の充実を中心に労働者保護の姿勢が見られるも、働き過ぎを助長しかねない規制緩和の方策も示されている。
2.労働者の命と健康、生活時間を守る方策を確実に実現すべき
「労働時間法制」については、連続勤務日数制限の導入や勤務間インターバルの強化といった「労働からの解放の規制」の充実に加え、「最長労働時間規制」の実効性確保の観点から管理監督者の健康・福祉確保措置の充実などが盛り込まれた。これらは労働者の命と健康、そして生活時間を守る点で重要であり、確実に実現すべきである。
一方で、時間外労働の上限規制の見直しについては消極姿勢であるにもかかわらず、テレワーク時の新たなみなし労働時間制の創設や兼業・副業時の割増賃金通算の撤廃などについて具体的提起がされている。これらは長時間労働や過労死等の現実を無視したものと言わざるを得ない。
3.集団的労使関係の中核的担い手である労働組合が機能発揮できる環境整備を
「労使コミュニケーション」について、過半数代表者の選出手続きや権利保護にかかる法整備などが示されたことは重要であるが、集団的労使関係の中核的担い手である労働組合が十全に機能発揮できる環境整備が必要である。また、報告書は労使合意による「法定基準を調整・代替する仕組み」を強調するが、法規制の解除を労使に大幅に委ねることは法の存在意義を否定するものであり認められない。
その他、労働基準法の「労働者」に関し、家事使用人の適用除外や労働者性の判断基準の見直しについても言及している。「曖昧な雇用」で働く者が増える中、より多くの者が法の保護を享受できるよう見直しを行うべきである。
4.連合は「真に働く者のための労働基準関係法制」実現をめざし全力で取り組む
労働基準法は、労使の力関係の差を踏まえ、労働者保護の観点から労働条件の最低基準を定めた強行法規であり、この意義はいつの時代も不変である。連合は、今後行われる労働政策審議会の議論において労働者保護の強化に向けた法改正を求めるとともに、非正規雇用で働く者の処遇改善やジェンダー平等の推進も含め、「真に働く者のための労働基準関係法制」の実現をめざし全力で取り組む。
以 上