事務局長談話

 
2024年07月04日
「働き方の多様化を踏まえた被用者保険の適用の在り方に関する懇談会」の「議論の取りまとめ」、および2024年財政検証結果の公表に関する談話
日本労働組合総連合会
事務局長 清水 秀行

1.2025年年金制度改革に向けた論点に関わる重要な内容を公表
 厚生労働省は、7月3日に「働き方の多様化を踏まえた被用者保険の適用の在り方に関する懇談会」(座長:菊池馨実早稲田大学理事・法学学術院教授)の「議論の取りまとめ」を公表した。さらに、同日に公的年金の2024年財政検証結果を公表した。社会保障審議会年金部会において2025年の年金制度改革に向けて議論されているが、今回の公表内容は、被用者保険の適用拡大や基礎年金の給付水準などの論点に大きく関わる重要な内容である。

2.適用拡大の方向性が示された内容は一部に留まっており遺憾
 懇談会の「議論の取りまとめ」では、短時間労働者の被用者保険適用に関わる企業規模要件、5人以上の個人事業所にかかる非適用業種について、撤廃・解消の方向で検討を進めるべきとしている点は評価できる。しかし、労働時間・賃金要件の引き下げ、複数の事業所の合算で要件を満たす場合の適用などについて、今回も明確な方向性が示されなかったことは遺憾である。

3.基礎年金の給付水準の底上げが急務
 2024年財政検証では、人口推計や経済前提などにもとづき、将来の年金の給付水準が示された。2019年財政検証と比較すると、労働参加の進展などにより、全体的には将来の給付水準(所得代替率)は上昇している。しかし、基礎年金の給付水準は2024年度の36.2%から2057年度には25.5%まで低下する見通しであり(過去30年投影ケース)、楽観的に受け止めるべきではない。基礎年金の給付水準の低下は、公的年金制度が持つ所得再分配機能や防貧機能を弱めるため、底上げが急務である。

4.働き方などに中立的で、誰もが安心してくらすことができる年金制度の構築を
 雇用形態や勤務先などにより被用者保険が適用されるかどうかがかわる現行制度は不合理である。連合は引き続き、働き方などに中立的な社会保険制度の構築をめざし、各要件の見直し・撤廃により、すべての被用者への被用者保険を適用すべきことを訴えていく。あわせて、制度内容の周知や現場労使の理解促進に向けた取り組みを強化する。
 また、誰もが安心してくらすことができる年金制度の構築をめざし、国庫負担割合の引き上げなどによる基礎年金の給付水準の底上げの実現に向けて、構成組織・地方連合会・連合本部一体となって取り組みを進める。

以 上