事務局長談話

 
2024年06月21日
政府の「経済財政運営と改革の基本方針2024」に対する談話
日本労働組合総連合会
事務局長 清水 秀行

1.すべての国民の将来不安の解消と未来に希望を持ちうる政策を
 6月21日、政府は、中小企業等の賃上げの実現で「家計所得の伸びが物価上昇を上回る状況」を確実に作り出し、成長分野への集中投入によって「新たな経済ステージへの移行」をめざすとする「経済財政運営と改革の基本方針2024」を閣議決定した。
 継続した賃上げや成長分野への集中投入は当然の措置であるが、歯止めのかからない人口減少、格差の拡大や貧困の固定化など深刻な構造課題を抱える日本にとって、真に必要なのは、将来不安の払しょくにつながる政策である。
 2025年度予算編成・税制改正では、社会保障と税の一体改革による所得再分配機能の強化、国庫負担割合の引き上げによる基礎年金の給付水準の底上げ、能登半島地震からの復興に向けた十分な予算措置、東京一極集中の是正に向けた偏在性の少ない地方税体系の確立など、すべての国民の将来不安の解消と未来に希望を持ちうる政策を、政府の責任で示すべきである。

2.すべての働く者が生活向上を実感できる賃上げの定着と適正な価格転嫁が重要
 経済社会のステージ転換には、物価上昇を上回り生活向上を実感できる賃上げを継続・定着させていくとともに、能力開発やセーフティネット機能の強化、取引適正化、労働者保護ルール整備などを一体的に推進すべきである。最低賃金についても「誰もが時給1,000円」を速やかに実現すべきであり、価格転嫁対策の実効性を高め、物価や賃金が継続的に上昇する新たな時代に対応するルール作りを進める必要がある。加えて、譲渡担保契約等の法制化にあたっては、労働者の生活に不可欠である労働債権を担保権に優先して確保できるルールをあわせて整備すべきである。
 診療・介護・障害福祉サービス等の2024年度報酬同時改定では、賃上げに重点を置いた改定が行われたが、他産業との賃金格差を踏まえると、決して十分ではない。人材確保の観点からも、継続的にさらなる処遇改善を行う必要がある。
 質の高い教員の確保・育成に向けては、学校における働き方改革の加速化や教員の処遇改善が不可欠であり、実行に必要な予算を十分に確保すべきである。

3.政府は財政健全化に向けた具体策を示すべき
 3年ぶりに基礎的財政収支の2025年度黒字化目標が明記され、「経済・財政新生計画」のもとで債務残高GDP比の安定的な引き下げをめざすなど、財政健全化に向き合う一定の姿勢は示されたが、具体的な方策は見当たらない。赤字国債に依存し続ける財政からの脱却に向け、中長期的な財政運営の監視・評価を行う独立財政機関を設置し、財政規律の強化と歳出構造の不断の見直しを行うべきである。

以 上