事務局長談話

 
2024年06月21日
「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2024年改訂版」に対する談話
日本労働組合総連合会
事務局長 清水 秀行

1.構造課題に正面から向き合い、生活向上を実感できる政策の実現が不可欠
 6月21日、政府は、中小企業等や地方における賃上げの定着、「三位一体の労働市場改革」や企業の参入・退出の円滑化、GX・DXなどへの投資の推進などによって、デフレからの完全脱却をはかるとする「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2024年改訂版」を閣議決定した。
 日本経済の自律的成長の鍵の一つは、30年余にわたり染み付いたデフレマインドの払しょくにある。構造課題である人口減少、格差の拡大と貧困の固定化に正面から向き合い、すべての働く者の将来不安を払しょくし、可処分所得の増加による生活向上が実感できる政策が実現しなければ、GDPの6割を占める個人消費は拡大しない。租税と社会保障の負担割合を示す国民負担率のあり方も含め、税と社会保障の抜本改革議論を加速させるべきである。

.持続的・構造的な賃上げには、能力開発や取引適正化などを一体的に推進すべき
 持続的・構造的な賃上げをめざす「三位一体の労働市場改革」については、能力開発に加え、セーフティネット機能の強化や取引の適正化、労働者保護ルールの整備などを一体的に推進すべきである。特に、労働者の能力開発に向けて、建設、物流、観光など幅広い業種において、業界団体・個別企業が策定する民間検定を政府が認定し講座受講の支援を行う仕組みや、全世代へのリ・スキリングを進めるとした点は重要である。
 他方で、ジョブ型人事制度の導入や、労働移動の円滑化、M&Aや私的整理に関しては、業種・職種ごとの職場実態を踏まえた労使協議、労働者の意思の反映が重要であり、労働者保護の観点を欠いてはならない。なお、解雇の金銭解決制度は不当な解雇を促進しかねないため、断じて導入すべきではない。

3.産業構造の転換には「公正な移行」の実現が不可欠
 GX・DXの推進は、産業価値の創造や持続可能な社会の実現に資することが期待される一方、これらの進展に伴う産業構造の転換は、雇用や中小企業経営、地域経済などへの負の影響が懸念される。政府は本年度中に「GX2040ビジョン」を取りまとめるとしているが、「公正な移行」の実現を戦略の基底に据え、ロードマップを作成し、必要な予算措置を講じるべきである。
 連合は、持続可能で包摂的な社会・経済の実現に向けて、重層的な雇用のセーフティネット構築をはじめ、誰一人取り残さない「働くことを軸とする安心社会」に資する政策実現をはかるべく、引き続き全力で取り組んでいく。

以 上