2024年05月17日
民法等の一部を改正する法律の成立に対する談話
1.施行までに必要な検討や国民などへの十分な周知を
5月17日、参議院本会議において「民法等の一部を改正する法律」が可決・成立した。今回の改正により、離婚後に単独親権に加え共同親権も可能とするなどの親権に関する規定が整備されるとともに、養育費の支払い確保に向けた制度の拡充などが行われる。改正案は国会審議で数多くの問題や懸念が明らかとなったことから、衆議院で修正議決されたうえ、衆議院で12項目、参議院で15項目の附帯決議が付された。政府は、2年以内とされた施行までの間に、関係省庁・関係機関で連携して必要な検討を進めるとともに、国民や現場への十分な周知や啓発活動に努めなければならない。
2.国会審議で示された多くの懸念を重く受け止め、政府は真摯に対応すべき
共同親権に関しては、国会審議の中で、監護者指定が必須ではないために親権行使が滞る可能性や、協議離婚時の親権者の定めなどに関して適正な協議がなされない恐れなどの懸念が明らかとなった。これらを踏まえ、政府による子の監護に関する取り決めの重要性の広報・啓発活動、改正の趣旨や内容の周知、協議離婚において親権者の定めが父母双方の真意によることを確認する措置、施行後5年を目途に必要に応じて所要の措置を講ずることが附則に加えられ、修正議決された。また附帯決議には、改正によりDV・虐待のある事案など多様な問題に対する判断が求められる家裁の人的・物的体制の強化や専門性向上などが盛り込まれた。政府は、国会審議で明らかとなった数多くの懸念や修正内容、附帯決議を重く受け止め、真摯に対応すべきである。
3.養育費支払い確保の実効性担保に向けた政府の支援が必要
養育費の支払いの確保に向けては、法定養育費の制度化や「養育費等の請求権」への先取特権付与がなされたが、実効性を担保するためには規定のみでは不十分である。国会審議では法定養育費が省令によって少額に設定される可能性や、かえって本来の養育費の取り決めが滞る危険性に関する懸念が示されたほか、附帯決議には養育費の履行確保のさらなる強化に向けた検討などが盛り込まれた。政府は、当事者に養育費取り決めを促すとともに、養育費の不払いに対する強制執行手続きの利用案内、民事法律扶助制度の周知や支援を行うことが必要不可欠である。
4.連合は、引き続き子の福祉の確保に向けて取り組む
子の利益の確保を目的とする本改正がかえって子の不利益となるようなことがあってはならない。連合は、改正法の運用が子の福祉の確保に資するものとなっているか注視していくとともに、子の福祉の確保に向け引き続き取り組んでいく。
以 上