事務局長談話

 
2024年03月22日
「こども性暴力防止法案」の閣議決定に関する談話
日本労働組合総連合会
事務局長 清水 秀行

1.個人情報を事業者に提供する新たな仕組みであり慎重に議論すべき
 政府は3月19日、日本版DBSを盛り込んだ「学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律案(こども性暴力防止法案)」を閣議決定した。本法案では、学校や保育所など学校設置者に子どもへの性暴力などの防止措置を講ずることを義務化するとともに、放課後児童クラブ、認可外保育所、学習塾などに対する認定制度を設け、国からの認定を受けた事業者が学校設置者と同様の義務を負うことを盛り込んでいる。この中で、教員などへの研修、子どもとの面談のほか、新たな仕組みとして、性犯罪前科の有無の確認も含まれているが、犯罪歴を扱うなどこれまでにないものであり、極めて慎重な議論が必要である。

2.犯罪事実確認の方法の見直し、情報管理の徹底を求める
 学校設置者や認定事業者が行う「対象となる性犯罪前科の有無の確認」は、犯罪歴という極めて機微な個人情報が提供されるため、連合は、教育や保育などに従事することを希望する者が申請し、「性犯罪前科が無いこと」の証明を本人に回答すべきであると主張してきた。しかし、本法案に反映されておらず、個人情報保護の観点から問題がある。また、事業者における情報の管理や廃棄の方法、情報漏洩が発生した際の対応策や責任の所在など、罰則を含め厳しく定めることが重要である。なお、対象範囲を拡大する場合は慎重な検討が求められる。

3.安全確保措置を講じるにあたっては不当な解雇や配置転換の防止対策が不可欠
 法案では、性犯罪前科がある者に加え、前科がない者でも「性加害のおそれ」があると認められる場合には、事業者に配置転換等の安全確保措置を義務づけるとしている。安全確保措置を講じるにあたっては、労働者の雇用や、憲法で保障された「職業選択の自由」などの権利に影響が及ばないよう、事業者による不当な解雇・配置転換を防止するための対策を講じることが不可欠である。

4.被害者も加害者も出さないための施策の強化を
 そもそも子どもへの性暴力は断じて許されない。性暴力防止のための研修を必須とすることや小児性愛症の周知および治療方法の研究促進・治療支援を行うなど、子どもに対する性犯罪の9割を占める「初犯」を起こさせない対策を行うべきである。また、初犯防止の施策とともに、再犯防止に向け性犯罪を起こしたすべての者に更生プログラムを実施するなど、被害者も加害者も出さない施策を強化すべきである。連合は、子どもの権利を守り、子どもの最善の利益を実現するため、連合フォーラム議員を通じた国会審議への意見反映や世論喚起などの取り組みを強化していく。

以 上