事務局長談話

 
2024年03月22日
事業性融資の推進等に関する法律案に対する談話
日本労働組合総連合会
事務局長 清水 秀行

1.法案は労働者保護の仕組みを形骸化させかねない重大な問題をはらんでいる
 政府は3月15日、事業性融資の推進等に関する法律案を閣議決定した。本法案は、2023年2月に金融庁金融審議会のワーキング・グループがとりまとめた報告書の内容に沿っているが、企業価値担保権を設定する際の労働組合等に対する情報提供等や、報告書で「事業を解体せず雇用を維持しつつ承継することを原則」とするとした点が条文化されていないなど、連合が強く主張した労働者保護の仕組みを形骸化させかねない重大な問題をはらんでいる。

2.企業価値担保権においては他制度よりも強固な労働者保護ルールが欠かせない
 法案は、事業の実態や将来性に着目した融資を進めるため、土地等の有形資産に加え、ノウハウや顧客基盤、労働契約などの無形資産を含めた総財産を一体として担保にとる企業価値担保権の創設を主な内容としている。担保の対象範囲が非常に広い企業価値担保権は、他の担保制度よりも担保権者等が強大な影響力を行使する懸念が大きい。そのため、企業が債務不履行に陥り資産を売却する時はもとより、平時においても労働者の雇用や労働条件に影響を及ぼす懸念があることから、他の担保制度よりも強固な労働者保護ルールが欠かせない。

3.原則は一体的な事業譲渡であることを明確化するなど労働者保護の強化を
 報告書では「事業を解体せず雇用を維持しつつ承継することを原則」とするとしていたが、法案では、そのことが一切明確にされておらず、極めて問題である。労働者保護の強化をはかるため、原則は一体的な事業譲渡であることを条文で明記するとともに、やむを得ず個別財産の売却を認める場合についても管財人の判断だけに委ねることなく、さらに厳格な要件を課すべきである。加えて、①設定時及び実行時における労働組合等との協議、②担保権者等が企業に対する経営関与を行ってはならないこと、③事業譲渡の対価のうち、倒産時等に備えて一般債権者のために取り置く部分は労働債権者等の確実な保護に資する水準とすること、④事業性融資の推進や政策立案などを担う事業性融資推進本部の構成員として厚生労働大臣を含めることを法令等で措置すべきである。

4.確実な労働者保護の仕組みやルールを伴わない新たな担保制度は必要ない
 企業価値担保権を中心とした事業性融資の推進によって企業の資金調達を進める一方で、働く者の雇用等に対する保護が置き去りにされることはあってはならない。確実な労働者保護をはかるための対策の強化が不可欠である。連合は、連合フォーラム議員などと連携しながら国会審議に対応していく。

以 上