事務局長談話

 
2024年01月17日
経団連「労使自治を軸とした労働法制に関する提言」に対する談話
日本労働組合総連合会
事務局長 清水 秀行

1.労使自治の尊重という名の下に労働法制の規制緩和を行うことは許されない
 1月15日、経団連は「労使自治を軸とした労働法制に関する提言」を公表した。提言は、労働法制について、労働者の健康確保等にかかわる最低限のルールとし、細部は労使自治に委ねるなど時代にあった見直しが必要としている。労働者の安全衛生や健康確保等を法制度として堅持し続けることは当然である。未だに労基法に違反する事業所が後を絶たず、過労死等も多いことを踏まえれば、労使自治の尊重という名の下に労働法制の規制緩和を行うことは許されるものではない。

2.労働者の命と健康を守るためには強行法規としての労働時間規制の堅持を
 提言は、過半数労働組合のある企業などにおける労働時間規制の例外の範囲拡大を提案している。しかし、法律等の規制解除を現場の労使に大幅に委ねる仕組みでは、厳然と存在する「労使の力関係の差」により、労働者の命と健康を脅かすことにつながりかねない。労働基準法の基本原則などを堅持しながら、労働者の多様な働き方を実現することは労使協議等を通じて今でも可能であり、強行法規としての労働時間規制のあり方を見直す必要はない。

3.労働者の多様なニーズを適切に反映させるためには対等な労使関係の実現が重要
 提言では、過半数労働組合のない企業における「労使協創協議制(選択制)の創設」も示されているが、団結権等を基盤としない仕組みの下で対等な労使交渉が担保されるのか、労働者の多様なニーズを適切に反映できるのかは極めて疑問である。また、選択制であっても使用者の意思による導入の強制が懸念される。加えて、法定手続を企業単位とした場合、就業場所の実態が反映されないおそれがある。集団的労使関係にもとづく実効性ある労使自治を進めるためには、まずは労働三権が保障された労働組合による対等な労使関係の構築を促進することが重要である。その上で、中長期的な視点に立って「労使対等の原則」を堅持しながら集団的労使関係のあり方を検討していくことも必要である。

4.すべての働く人が健康で安全に働き続けられるよう全力で取り組む
 連合は、すべての働く人が健康・安全で働き続けられるよう、現行法制の堅持とともに、職場における労働関係法令のさらなる遵守徹底、対等な労使関係の実現に向けた組織化などに今後も全力で取り組む。

以 上