事務局長談話

 
2024年01月10日
労働政策審議会職業安定分科会「雇用保険部会報告」に対する談話
日本労働組合総連合会
事務局長 清水 秀行

1.適用拡大は評価するも、育児休業給付の保険料率引き上げの議論が不十分
 1月5日、労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会(部会長:守島基博学習院大学教授)は、「雇用保険部会報告」を取りまとめた。週所定労働時間10時間以上の労働者への雇用保険の適用拡大など、雇用のセーフティネットを広げる観点から評価できる。しかし、育児休業給付の保険料率の引き上げについて、議論が尽くされない中で示されたことは残念である。

2.複数就労における失業のあり方など引き続き検討が必要
 「報告」の主な内容は、(1)雇用保険の適用拡大、(2)自己都合離職者の給付制限期間の短縮、(3)教育訓練給付の拡充および新たな給付と融資の創設、(4)育児休業給付の給付率引き上げおよび育児時短就業給付(仮称)の創設などである。
 適用拡大により対象となる労働者の中には複数就労を行う者も一定数想定されるため、失業のあり方などについて引き続き検討が求められる。教育訓練給付の拡充については、キャリア形成に資するよう雇用形態にかかわらず活用されることが重要である。育児休業給付の給付率引き上げや育児時短就業給付(仮称)の創設については、キャリア形成の阻害や公平性の観点から労働者間の分断などにつながらないよう、丁寧に周知しながら取り組みを進めるべきである。
 

3.雇用保険制度の趣旨を踏まえた財源のあり方が求められる
 財政基盤の強化について、育児休業給付では、2024年度末まで暫定的に引き下げられている国庫負担割合を本則に戻す(2024年度から1/80→1/8)と同時に、労使の保険料率の見直し(2025年度から4/1,000→5/1,000)と、財政状況に応じて引き下げを可能とする仕組みの導入が示された。国庫負担割合を本則に戻すことは、安定的な財源確保につながるものと捉える。しかし、保険料率については、試算によれば当面据え置かれるものとされているが、本来は雇用保険部会で十分な議論を尽くしたうえで判断すべきである。なお、育児休業給付や教育訓練給付などの財政基盤の強化にあたっては、雇用保険制度の趣旨や国の責務を踏まえた財源のあり方の検討が求められる。
 

4.連合は雇用保険の安定運営を通じた労働者保護に引き続き全力で取り組む
 今後は、報告書にもとづき、労働政策審議会職業安定分科会での法案要綱の審議を経て、次期通常国会において改正法案が提出される予定である。連合は、雇用のセーフティネットである雇用保険が将来にわたり安定的に運営され、支援を必要とする労働者が適切に保護されるよう、全力で取り組んでいく。
 

以 上