事務局長談話

 
2023年11月29日
「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」についての談話
日本労働組合総連合会
事務局長 清水 秀行

1.労務費の適切な転嫁のあり方が早期に示された点は評価
 11月29日、政府は「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針(以下、「指針」という)」を取りまとめた。「指針」は、発注者に対し、受注者からの求めがなくても、定期的に労務費の転嫁について協議の場を設けることや、価格交渉にあたって、最低賃金の上昇率、春季生活闘争の妥結額やその上昇率などの公表資料を合理的な根拠のあるものとして尊重することなどを求めている。連合が2024春季生活闘争における基盤整備の重要課題の一つとして求めてきたものであり、2023闘争を上回る賃上げ実現に向けた足がかりになるものとして評価できる。
 

2.業種別の対策や実効性の確保、周知・相談活動が課題
 「指針」では発注者および受注者それぞれが採るべき行動の一般原則を取りまとめているが、価格転嫁が進んでいない産業・業種もあることから、業種別に踏み込んだ対策が必要である。また、調達部門など交渉現場での実効性の確保も課題である。さらに今後の取り組みとして、「指針」の内容が中小企業の経営者をはじめ広く社会に認識され十分に活用されるよう、きめ細かな周知・相談活動に取り組む必要がある。
 

3.連合の政策・制度実現活動の成果
 本年3月の「政労使の意見交換」において、中小企業・小規模事業者の賃上げ実現には、労務費の適切な転嫁を通じた取引適正化が不可欠であることを共有した。政府が「指針」策定に言及して以降、連合は、継続的な賃上げの実現にきわめて重要な意味を持つものであると認識し、新しい資本主義実現会議への参画や関係省庁への要請活動などを通じ、政府が労務費に特化した「指針」をつくることの重要性を訴えてきた。「労務費については生産性の向上で吸収すべきと言われ交渉のテーブルに乗せられない」「交渉しようとしても詳細な資料を求められ交渉を断念せざるを得ない」など、われわれが訴え続けた現場の声が一定程度反映されたものと受け止める。
 

4.来年の賃上げにむけ、国と地方総がかりでの取り組みが必要
 今後、「指針」について、国と地方は総がかりの周知・相談活動を早急に展開する必要がある。連合はその取り組みに最大限協力するとともに、2024春季生活闘争とセットで取り組むことを通じ、経済も賃金も物価も安定的に上昇する経済社会へとステージの転換をはかるべく全力を挙げる。
 

以 上