事務局長談話

 
2023年10月27日
「個人事業者等に対する安全衛生対策のあり方に関する検討会」報告書に対する談話
日本労働組合総連合会
事務局長 清水 秀行

1.労働安全衛生法による保護対象を労働者以外に広げる方向性が示される
 10月27日、厚生労働省の「個人事業者等に対する安全衛生対策のあり方に関する検討会」(座長:土橋律東京大学大学院教授)は報告書をとりまとめ、公表した。報告書は、労働安全衛生法における保護対象を、労働者に限定せず、個人事業者等にも拡大するために必要な見直しを求めるものであり、全体的な方向性としては、連合が取り組む「誰もが安全かつ安心して働くことができる社会の実現」や「曖昧な雇用」で働く就業者の保護に資するものと受け止める。
 

2.個人事業者等の災害把握には災害報告が適切になされることが重要
 報告書では、個人事業者等の業務上災害把握のため、一定の注文者、災害発生場所を管理する事業者、そして個人事業者等に災害報告を義務付けるとともに、個人事業者等に対する不利益取扱の禁止や申告権付与などの対応策が示された。今後、個人事業者等に関する災害の集計・分析が適切に行われれば、安全衛生対策の強化につながることが期待される。一方で、弱い立場におかれる個人事業者等が、発注者や事業者から指示を受け、あるいは契約解除等を恐れ、報告等を諦めることも懸念される。実効性確保の観点から行政による適切な監督・指導を行うとともに、実態として労働者性が認められる者に対しては、確実に労働関係法令の適用がはかられるよう対策を強化することが求められる。

3.事業者や注文者等に対して一定の災害防止措置が課されたことは評価
 災害防止対策については、就業場所を管理する事業者、災害発生リスクを管理できる注文者、個人事業者それぞれの対応策が示された。個人事業者等も労働者と同じ安全衛生水準を享受すべきとの考えに立ち、事業者や注文者に対し、危険箇所への立入禁止や混在作業場での連絡調整の義務付けを行うほか、安全衛生を損なう条件設定を行わない配慮を求めるなど、過重労働やメンタルヘルス対策にも資する一定の対策を示した点は評価できる。一方、安全教育受講や健康診断受診に当たっての機会提供や費用確保について国が注文者等に取り組みを促すに留まることやプラットフォーマーへの新たな規制は将来的な検討とされるなど課題も残されている。

4.安全かつ安心に働くためのセーフティネット拡充に向けて今後も取り組む 
 経済社会が変容し、働き方がいかに多様化しようとも、すべての働く者の安全衛生の確保が大前提であることに変わりはない。個人事業者等の安全衛生対策は、同じ職場で働く者全体の心身の健康・安全にも直結する重大な問題である。連合は、社会の実態に合わせた「労働者」概念の見直し・拡充を含め、働く者のセーフティネット充実に向けて、引き続き全力で取り組んでいく。

以 上