事務局長談話

 
2023年10月20日
厚生労働省「新しい時代の働き方に関する研究会」報告に対する談話
日本労働組合総連合会
事務局長 清水 秀行

1.働き方が個別・多様化する中でも集団的労使関係の構築・強化が重要
 10月20日、厚生労働省の「新しい時代の働き方に関する研究会(座長:今野浩一郎学習院大学名誉教授)」は、今後の労働基準法制のあり方などに関する報告をとりまとめた。報告では、個別・多様化する働く人の希望を反映させる「支える役割」に関する制度見直しなどの方向性が示された。労働基準法制による労働者を「守る役割」は、今後も不変かつ重要であることが強調された点は評価できるが、労働組合の組織化をはじめとする集団的労使関係の一層の構築や強化の観点が不十分であり、「労使対等の原則」を確実なものとする取り組みこそが重要である。

2.労働基準法の基本原則を堅持しつつ労働者の多様な希望を尊重することは可能
 報告は、働く人の健康確保などの基本原則は今後も堅持すべきことを強調しながらも、個々人が希望する働き方やキャリア形成に対応できるよう労働基準法制の見直しが必要とした。労働基準法は働く上での最低基準であり、それを超える「多様な対応」は法制度を見直さなくても十分に可能である。現に個別労使では労使協議などを通じ、労働者がより働きやすくなるよう様々な取り組みを行っており、労働基準法の基本原則などを堅持しながら、労働者の多様な希望を尊重することは可能である。過労死などが未だ少なくない中で、労使の選択の尊重を理由とした労働時間制度の柔軟化などの規制緩和につながりうる見直しは必要ない。

3.働く上での処遇の公正性や納得感の確保には対等な労使関係の構築が必要
 報告は、多様性を尊重する中では労働者間の公平性・納得性の確保が課題であり、労働組合の役割は引き続き大きいとしつつも、個別の労使コミュニケーションや、多様・複線的で集団的な労使コミュニケーションのあり方を検討すべきとした。働く人の多様なニーズを適切に労働条件や職場環境に反映させ、処遇の公正性や納得感を十分に確保するためには、まずは団結権などが保障された労働組合による労働者間および労使間の関係構築を促進することが重要である。その上で、「労使対等の原則」を堅持しつつ集団的労使関係のあり方を検討していくことも必要である。

4.今後もすべての働く人の権利保護が一層進むよう全力で取り組む
 連合は、これまでもすべての働く人の権利が守られ、安心して働ける社会の実現をめざして取り組みを進めてきた。労働者保護の根幹である労働基準法制の基本原則などの堅持はもとより、働く人の健康・安全の底上げに加え、より多くの働く人に労働関係法令が適用されるよう、今後も全力で取り組みを進めていく。

以 上