事務局長談話

 
2023年10月19日
第26回参議院選挙の「1票の較差」を巡る最高裁の統一判断についての談話
日本労働組合総連合会
事務局長 清水 秀行

1.立法府は抜本的な改革案を導き出すべき
 10月18日、1票の較差が最大3.03倍だった2022年7月の第26回参議院選挙を巡り、最高裁判所が「合憲」との統一判断を示した。これは、全国で計16件起こされた訴訟に対する高等裁判所の判決が出揃ったことを受けたもので、「合憲」は2016年、2019年参議院選挙と3回連続となった。しかし、合区は多くの問題を抱えており、立法府は議論を着実に前に進めて抜本的な改革案を導き出すべきである。

2.与野党は参議院改革協議会において合意形成に向けた一層の努力を
 近年の参議院選挙における1票の較差は、2016年は鳥取・島根と徳島・高知での合区導入を含む「10増10減」により3.08倍、2019年は埼玉の「2増」で3.00倍であった。これらについて最高裁はそれぞれ「合憲」との判断を下したが、2020年の判決では国会に較差を拡大させない取り組みを求めていた。今回、違憲1件、違憲状態8件、合憲7件と高裁の判決が分かれた中、最高裁の判断が注目されていた。なお、最高裁は「立法府が格差是正に向けた取り組みを進めていくには、さらに議論を積み重ねる中で実効性や課題を慎重に見極め、広く国民の理解も得ていく必要があると考えられ、合理的な成案に達するには、なお一定の時間を要する」と指摘した。2022年6月の参議院改革協議会の報告書は「合区の不合理は解消すべきとの意見が多くあり」としながらも結論は先送りしている。与野党は、協議会において合意形成に向けた一層の努力を行うべきである。

3.多くの問題を抱える合区は解消すべき
 連合本部は、合区対象の4地方連合会からの要請を受け、連合フォーラム「政策勉強会」などでの議論を重ね、「合区については、都道府県という単位の政治的重要性に鑑み、参議院に地方の事情に精通した全国民の代表としての活動など、二院制のもとでの独自の役割を定めることによって解消する」との考え方を整理した。これを踏まえ、その内容を連合の重点政策に盛り込み、各党への要請や立憲民主党・国民民主党の関係議員と個別の意見交換も行ってきた。合区には低投票率など民主主義の根幹にかかわる弊害も指摘されている。人口減少が進む中で、多くの問題を抱える合区によって1票の較差を是正し続けることに合理性はなく、早急に解消すべきである。

4.参議院の存立意義を明確にすることが重要。連合は政策・制度課題に取り組む
 参議院は「衆議院のカーボンコピー」と揶揄されることもあるが、調査会や緊急集会、職能代表制の性格を持つ比例代表など、独自の機関・機能を有しており、改めて存立意義を明確にすることが重要である。連合は、国民の立場に立った選挙制度の実現、投票率の向上に向けて、引き続き政策・制度課題に取り組んでいく。

以 上