事務局長談話

 
2023年06月16日
政府の「経済財政運営と改革の基本方針2023」に対する談話
日本労働組合総連合会
事務局長 清水 秀行

1.政府は責任を持って財政健全化の道筋を示すべき
 6月16日、政府は「経済財政運営と改革の基本方針2023」を閣議決定した。方針は「新しい資本主義」を加速し、「家計所得の増大と併せて、持続可能な社会保障制度の構築、少子化対策・こども政策の抜本強化、質の高い公教育の再生等に取り組むことを通じ、分厚い中間層を復活させ、格差の拡大と固定化による社会の分断を回避し、持続可能な経済社会の実現につなげる」としている。
 掲げられた個々の政策は、現下の構造課題に一定の対策を示しているものの、財源が明確に示されていない政策や基礎的財政収支黒字化の目標年度の明記がまたしても見送られるなど、今後の経済財政運営に責任ある方針とは言い難い。まずは、2024年度に行うとしている「経済・財政一体改革の進捗に関する点検・検証」を前倒しし、その結果を踏まえ、財政健全化の道筋を示すべきである。

2.雇用安定と構造的賃上げ、持続可能な社会保障制度に向け実効性ある施策が必要
 「三位一体の労働市場改革」がめざす雇用の安定と構造的賃上げには、人への投資とともに、セーフティネット強化や、取引適正化、労働者保護ルール整備などの推進が不可欠である。また、「持続可能な社会保障制度の構築」に向けて、処遇改善による人材確保が不可欠であり、報酬改定での対応を含め、継続的かつ実効性ある方策が求められる。医薬品の自己負担の見直しや介護保険外サービスの利用促進については、公平なアクセスを確保する観点から慎重に検討すべきである。

3.すべての子どもの教育機会の保障と教育の質的向上が必要
 社会全体で子どもたちの学びを支える観点から、給食費だけでなく、高等教育も含め、すべての教育にかかる費用を無償化すべきである。無償化までの間は入学金・授業料を引き下げるとともに、給付型奨学金の対象については一層の拡大をはかるべきである。さらに、教職員は今なお長時間勤務の実態にあることを直視し、十分な財源を確保したうえで、業務の見直しや人員の拡充による教職員の負担軽減、時間外労働削減に向けた給特法の抜本的な見直しによる、学校の働き方改革が急務である。

4.「働くことを軸とする安心社会」の実現に向け取り組む
 本方針にも織り込まれているが、同時期に「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2023改訂版」「こども未来戦略方針」「女性活躍・男女共同参画の重点方針2023」も決定された。いずれも労働者への影響が懸念される施策が含まれており、具体的にはそれぞれの事務局長談話で指摘している。
 連合は、これらの方針や計画が持続可能で誰一人取り残されることのない「働くことを軸とする安心社会」の実現につながるよう、引き続き政府に強く働きかけていく。

以 上