事務局長談話

 
2023年06月16日
「性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律」(LGBT理解増進法)の成立に対する談話
日本労働組合総連合会
事務局長 清水 秀行

1.与党の拙速な国会運営により、不十分な内容で成立に至ったのは極めて遺憾
 6月16日、参議院本会議で、「性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律」(以下、LGBT理解増進法)が賛成多数で可決、成立した。この法案は2021年、超党派の議員連盟で一度は合意に至りながら、国会提出が見送られ、法案提出に先立つ与党内の議論や、衆議院における修正協議により、超党派法案から大幅に変わる内容となった。通常国会の会期末が迫る中で、人権問題に関わる重要法案が与野党の政争の具にされたことは、性的マイノリティ当事者が抱える課題への政府・与党の問題意識の低さも浮き彫りにした。
 与党が拙速な国会運営に終始し、野党には十分な協議の機会も与えられず、丁寧な合意形成もはかられないまま不十分な内容で成立に至ったことは極めて遺憾である。

2.理解増進や差別禁止の取り組みに法律が及ぼす影響を検証する仕組みが必要
 5月21日に閉幕したG7サミットの首脳宣言には「人々が性自認、性表現あるいは性的指向に関係なく」「生き生きとした人生を享受することができる社会を実現する」と明記されたが、LGBT理解増進法はこの宣言を実現するうえでも、多くの課題を残している。また、性的指向・性自認に関する差別を許さない世界の潮流に逆行するかのような今回の法律制定が、企業によるビジネスや労働者の雇用機会の逸失を招く可能性も懸念される。学校教育や行政、民間ではすでに人権問題として、理解増進や差別禁止の取り組みが講じられているのに対して、政府による取り組みの遅れは際立っている。政府には、遅れを取り戻すためのより一層の努力に加えて、既存の取り組みの後退や縮小をもたらさないよう、法律が及ぼす影響を確認し、検証するための仕組みづくりも求められる。

3.連合は性的指向・性自認に関する差別の禁止に向け、一丸となって取り組む
 連合は、これまで一貫して性的指向・性自認に関する差別を禁止する法律の制定を求めてきたが、法律の有無にかかわらず、引き続き各職場において、理解増進や差別禁止の取り組みを前に進めていく。そのためにも、性的マイノリティ当事者をはじめ、職場での取り組みに関わる労使も含めた関係者が参画する公開の場において、法律の施行状況を検証し、見直しをはかっていかなければならない。
 連合は今後、「連合出身議員政治懇談会」などと連携し、性的指向・性自認に関する差別の禁止を含めた法改正も視野に、一丸となって取り組んでいく。

以 上