事務局長談話

 
2023年05月12日
全世代対応型社会保障構築法の成立に対する談話
日本労働組合総連合会
事務局長 清水 秀行

1.全世代で医療費を公平に支え合う方向性は評価するも、報酬調整導入は問題
 5月12日、全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律(全世代対応型社会保障構築法)が参議院本会議で可決・成立した。本法には、出産育児一時金を後期高齢者医療制度から支援すること、かかりつけ医機能に関する制度整備などが盛り込まれた。医療保険制度の持続可能性やすべての人への医療アクセスの確保が求められる中、医療費を全世代で公平に支え合う仕組みの強化と医療提供体制の制度整備に向けた第一歩として評価できる。一方で、前期高齢者財政調整に報酬調整の仕組みが一部導入されることは問題である。

2.出産費用の保険適用へ向け、着実に費用の「見える化」を進めるべき
 法案審議の最中に政府から「こども・子育て政策の強化について(試案)」が打ち出され、2026年度を目途に出産費用の保険適用に向けた検討を行うとされた。連合はかねてより、希望する人が安心して子どもを産み育てることができる環境整備に向けて、負担軽減措置を講じつつ、正常分娩も含めた保険適用を求めてきた。医療保険部会が行った議論の整理を踏まえ、有識者による検討のもとで2024年中を目途に出産費用の見える化を行うとされている。妊婦やその家族のニーズなども丁寧にくみ取りながら、出産費用の保険適用に向け、着実に費用の見える化を進めるべきである。

3.前期高齢者財政調整への報酬調整の導入範囲は拡大すべきではない
 本法では、後期高齢者医療制度に続いて、前期高齢者財政調整についても、加入者数から部分的(導入の範囲は1/3)に報酬調整を行うことが盛り込まれた。連合は、報酬調整導入は現役世代の給付と負担の関係をいっそう歪めることから問題であり、積極的な保険者機能発揮の観点からも導入すべきでないことから、連合フォーラム議員と連携し国会での意見反映に取り組んだ。今回は部分的導入とされたが、その導入範囲は安易に拡大すべきではない。高齢者医療制度の抜本的な改革をはじめ、全世代対応型社会保障制度の実現に向けたさらなる議論が必要である。

4.国民皆保険を堅持し、持続可能な医療・介護保険制度の確立に向けて取り組む
 2024年度は診療報酬・介護報酬の同時改定が行われる。将来にわたり国民皆保険を堅持しつつ、誰もが住みなれた地域で安心してくらし続けられるよう、患者本位で質の高い医療を切れ目なく受けられる地域包括ケアの推進と持続可能な医療・介護保険制度の確立が不可欠である。連合は、構成組織・地方連合会、連合「患者本位の医療を確立する連絡会」や被用者保険関係団体などと連携し、被保険者・患者・提供者の立場から、引き続き政策実現に取り組んでいく。

以 上