事務局長談話

 
2023年04月28日
技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議「中間報告書」に対する談話
日本労働組合総連合会
事務局長 清水 秀行

1.技能実習制度・特定技能制度の適正化に向けた方向性が示されるも懸念が残る
 4月28日、入管庁の「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議(以下有識者会議)」は、「技能実習制度および特定技能制度の見直しに関する中間報告書」をおおむね取りまとめた。中間報告書には、監理団体や登録支援機関の要件の厳格化、行政による指導監督の必要性など、制度の適正化に資する見直しの方向性が示される一方で、安易な受け入れ職種・人数の拡大につながる懸念は残る。

2.技能実習制度の抜本的見直しにより創設される「新たな制度」には課題が多い
 中間報告書では、技能実習制度の運用実態を踏まえ、人材育成に加え「人材確保」を制度の目的に加えることや、転籍制限の緩和などにより、従来の制度を抜本的に見直した「新たな制度」の創設を提起している。一方、新たな制度には、監理団体や外国人技能実習機構など従来の仕組みは残される。人権保護の一層の強化はもとより、これまで問題となっていた処遇や就労環境の改善の実効性が上がらなければ、単なる「看板の掛け替え」にすぎない。また、転籍の要件や、悪質な監理団体・ブローカーの排除などの実効性確保に向け、今後検討すべき課題はなお多い。

3.特定技能制度を含む新たな制度の抱える問題の解消に向けさらなる検討が必要
 特定技能制度については、制度を存続させつつ「制度の適正化」を検討するとしている。不適切な登録支援機関の排除や、国の監督機関の設置などは、今後の検討課題としている。また、新たな制度と特定技能制度に共通する課題として、受け入れ見込み数の設定および対象分野の設定は、労使団体などの関係者などの関係者が参画する仕組みにより、検討プロセスを透明化する方向性が示されている。一方で、日本人と同等の賃金水準確保や、日本語能力の担保、人材育成が不十分のままでは、安易かつなし崩し的な低賃金労働者の受け入れ制度となる懸念は拭えない。特定技能制度を含む新たな制度の抱える問題の解消に向けさらなる検討が必要である。

4.連合は日本で働くすべての労働者の権利保護に向けて取り組む
 今後は、有識者会議において、中間報告書を踏まえ議論を行い、2023年秋を目途に最終報告書をとりまとめる予定である。外国人労働者は単に「労働者」ではなく、地域の「生活者」でもある。そのため、今後の外国人の受け入れについては、国民的かつ総合的で丁寧な検討が不可欠である。連合は、外国人労働者の権利が守られ、安心して働くことのできる社会の実現をめざし、構成組織、地方連合会一体となり、取り組んでいく。

以 上