事務局長談話

 
2023年03月31日
政府の「こども・子育て政策の強化について」(試案)に関する談話
日本労働組合総連合会
事務局長 清水 秀行

1.見直しの詳細や財源は不明確であり今後の検討を注視
 政府は3月31日、「こども・子育て政策の強化について」(試案)を取りまとめ、今後3年間で加速化する政策と将来像を明らかにした。子ども・子育てを取り巻く様々な課題の解消は「待ったなしの瀬戸際」と認識しているにもかかわらず、見直しの詳細やその裏付けとなる財源は不明確なままである。連合は今後の検討を重大な関心を持って注視するとともに、政府には子ども・子育てを社会全体で支える政策実現のさらなる加速化を求める。

2.処遇と労働環境の継続的な改善による保育士等の人材確保が不可欠
 試案には、連合がかねてから求めてきた出産費用の保険適用や児童手当の所得制限撤廃・対象範囲拡大のほか、保育士の職員配置基準や処遇など質の改善などが盛り込まれた。一方、保育所の利用条件緩和(こども誰でも通園制度(仮称))は重要であるが、潜在的待機児童の解消とセットで実施されなければならない。何より、安心して子どもを預けられる環境を整備するためには、現場を担う人材確保が不可欠である。継続的に保育士等の処遇・労働環境の改善をはかり、人材確保を進めるべきである。

3.子ども・子育てに限定せず、より広い視野での労働者間の公平性への配慮を
 働き方の見直しは育児期に限定したものではなく、どのようなライフステージにおいてもワーク・ライフ・バランスが保てる職場環境が必要であり、長時間労働を前提とした「男性中心型労働慣行」の是正、性別役割分担意識からの脱却が不可欠である。育児短時間勤務制度の拡充については、介護など他の事由により時短勤務を行う労働者や、育児のためにパートタイムで働く者との公平性にも配慮する必要がある。雇用保険の適用拡大についても触れられているが、育児休業給付制度を支える財政基盤の強化については、雇用保険以外の財源のさらなる投入を念頭に、今後議論を重ね、結論を得るべきである。

4.子どもの最善の利益を優先しつつ、安心社会の実現に向けて働きかけを強める
 政府は今後、内閣総理大臣の下に新たな会議を設置し、政策の検討をさらに深めるとしている。財源の具体的確保策については、徴収しやすいところから徴収する方法ではなく、子ども・子育てを広く社会全体で支える考え方に相応しいものとすべきである。連合は、誰もが安心してくらし働き続けることのできる社会の実現をめざしている。子どもや子育て中の人が孤独を感じることのないよう、子どもの最善の利益を優先しつつ、保護者が安心して生み育てられる条件整備や、子どもが健やかに育つための環境整備が不可欠であり、政府への働きかけを強めていく。

以 上