事務局長談話

 
2023年03月28日
2023年度税制改正関連法の成立に対する談話
日本労働組合総連合会
事務局長 清水 秀行

1.わが国の構造課題解決に向けた税制改革に正面から向き合う姿勢が見えず遺憾
 3月28日、「所得税法等の一部を改正する法律案」をはじめとする税制改正関連法案が、参議院本会議において与党などの賛成多数で可決・成立した。少子高齢化・人口減少、所得格差の拡大、貧困の固定化などわが国が抱える構造課題に加え、現下の物価高による国民の負担感の高まりに対して、正面から向き合う姿勢が見えないまま成立に至ったことは大変遺憾である。

2.真に国民に寄り添う恒久的な支援策の構築が必要
 政府は、次年度予算審議のさなかにありながら、国会審議を必要としない予備費を用いて2.2兆円もの物価高騰対策を行うとしている。この中には、低所得者対策として住民税非課税世帯に対する一律3万円の現金給付などが含まれており、選挙を意識した対応と言わざるを得ない。
 今必要なことは、真に国民に寄り添う恒久的な支援策であり、社会保険料・雇用保険料(労働者負担分)の半額相当分を所得税から控除する「就労支援給付制度」や、基礎的消費にかかる消費税負担分を給付する「消費税還付制度」など「給付付き税額控除」の仕組みの構築に向けた議論を早期に進めるべきである。あわせて、所得格差の拡大・固定化の防止に向けて、「極めて高い水準の所得に対する負担の適正化」に留まらず、金融所得課税を強化することで税による所得再分配機能を高めるべきである。

3.防衛力強化の必要性・妥当性に対する説明努力は不十分
 防衛力の強化とその財源確保策としての増税は、必要性と妥当性について国会での審議が深まるどころか、増税ありきでの政府答弁が繰り返され、国民の理解を得ようとする努力が見受けられなかった。また、増税の対象とされた税目には、被災地域の復興・再生が遅れる懸念や、関連産業で働く者への影響など、大きな課題がある。

4.連合は「公平・連帯・納得」の税制改革実現に向けて取り組む
 中長期的に持続可能な経済・社会の実現に向けては、もはや課題を先送りできる時間的余裕はなく、社会保障や教育、子ども・子育ての安定財源の確保や自動車関係諸税の抜本的見直しなど、国民の将来不安の払しょくにつながる税財政の抜本改革の議論を深めることが急務である。連合は引き続き、政府・政党への要請、政府税制調査会での意見反映、連合フォーラム議員との連携などに取り組み、働く者・生活者の立場に立った「公平・連帯・納得」の税制改革実現に向けて取り組んでいく。

以 上