事務局長談話

 
2023年03月24日
いわゆる「収入の壁」の報道に関する談話
日本労働組合総連合会
事務局長 清水 秀行

1.優先すべきは中長期的な視点に立った「人への投資」
 岸田首相は3月17日の記者会見で、若い世代の所得向上の実現に際し、いわゆる「106万円・130万円の壁」を意識せず働くことが可能となるよう、「被用者が新たに『106万円の壁』を超えても、手取りの逆転を生じさせない取り組みの支援の導入」に取り組む考えを明らかにした。しかし、その後の報道によれば、時限措置としてパート労働者等の保険料負担を実質的に国が一部肩代わりする具体案が報じられている。これは制度を複雑化させるとともに、いわゆる「収入の壁」の根本的な解決につながるとは言い難い。政府は、中長期的な視点で「人への投資」の促進を優先すべきである。

2.検討内容は公平性・合理性に疑問
 そもそも社会保険への加入は、給付の充実をもたらすものであり、単に可処分所得のみに焦点を当てることは適切ではない。また、報道によれば「要件を満たさない中小企業等で働く人が年収130万円を超えた場合に、自ら国民年金、国民健康保険に加入する人は対象とならない」とされており、これは被用者であるにも関わらず社会保険が適用されない者にとってさらなる不公平が生じかねない。さらに、短時間労働者の就業調整回避への効果は不透明であるとともに、労働時間を短くしても同水準の手取り収入を確保できるため、新たな就業調整が生じ得る可能性があり、合理性に疑問を抱かざるを得ない。

3.連合は働き方に中立的な社会保険制度の構築に取り組む
 連合は、雇用形態や勤務先の事業所の規模などの違いで社会保険の適用有無が変わることは不合理であることから、すべての労働者への社会保険適用を求めている。また、短時間労働で働く背景の一つに、育児・介護などによる時間的制約があることから、長時間労働是正などの働き方改革を進め、働き方や性別を問わず、すべての働く者が育児・介護等と仕事を両立できる環境を整備することが重要である。連合は引き続き、働き方に中立的な社会保険制度の構築に向けて取り組む。

以 上