事務局長談話

 
2023年02月10日
金融審議会「事業性に着目した融資実務を支える制度のあり方等に関するワーキング・グループ」報告に対する談話
日本労働組合総連合会
事務局長 清水 秀行

1.労働者保護に資する仕組みが設けられたものの雇用等に及ぼす影響は不透明
 2月10日、金融庁の金融審議会「事業性に着目した融資実務を支える制度のあり方等に関するワーキング・グループ」(座長:神田秀樹学習院大学大学院教授)は、「報告」をとりまとめた。企業の総財産を担保に資金調達を可能とする事業成長担保制度は、労働契約も目的財産に含むこれまでにない制度である。「報告」では、実行時に労働債権を優先的に弁済させる枠組みや、事業譲渡時に「事業を解体せず雇用を維持しつつ承継することを原則」とすることが盛り込まれた。しかし、制度全体として、働く者の雇用や労働条件に及ぼす影響はなお不透明である。

2.事業成長担保権の設定の際には労働組合等との協議が必要
 企業が事業成長担保制度を活用し、金融機関による伴走型支援によって事業を継続し、成長させるためには、労働者の理解と協力は不可欠である。さらに、労働契約も含めた契約上の地位も担保となり、実行時には事業譲渡が想定されることを踏まえれば、事業成長担保権の設定にあたって、労働組合等への通知や労使協議は必須である。しかし、「報告」では、その点のルール化は取り入れられなかった。事業成長担保権を制度化するのであれば、労働組合等との協議などを法令で措置することが必要である。

3.労働者の雇用等に影響が及ばないよう一層の対策を講じるべき
 「報告」では、実行時の労働組合への通知等の義務づけが記載されたが、労働者の雇用等の変動が生じる懸念が大きいことを踏まえれば、協議等の義務づけが重要である。また、事業譲渡に関し「報告」では例外とされた個別承継となる場合もあり、その際には労働契約が承継されない不利益や労働条件の引き下げなどの課題、さらに労働協約の承継についての取扱いの整理・検討が求められる。

4.制度化の動向を注視し労働者保護ルールの強化に向けて全力で取り組む
 今後、本報告にもとづいて政府は法案化の作業を行うとしている。連合は、事業成長担保制度が労働者の雇用や労働条件にマイナスの影響を及ぼすものとならないよう、その制度化の議論を注視し、あらゆる機会をとらえて意見反映に取り組む。加えて、倒産・事業再編時における労働者の雇用および労働債権を保護するルールの法制化に向けて、労働組合による組織点検活動を一層促進するなど引き続き構成組織・地方連合会と一体となり全力で取り組みを推進していく。

以 上